藤原さくら、Anly、感覚ピエロ……ドラマで新人アーティストの楽曲起用が増えている理由
ここまで女性シンガーが続いたが、バンドシーンでの主題歌起用も紹介したい。清野とおるのエッセイ風漫画 『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』をフェイクドキュメンタリーとしてドラマ化(松岡茉優が「松岡茉優」役として出演)した『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』(テレビ東京系)の主題歌に起用された、SUPER BEAVER「人として」。様々なこだわりを持つ人々をレポートしていくというストーリーにマッチした、「かっこよく生きたい」という思いを力強く歌うバラードナンバーだ。物語冒頭のオープニングシーンで流れる同曲は、バンドの持ち味である歌声と言葉が強く印象に残る。彼らはバンドとしてのキャリアは長いものの、ここ数年で飛躍的なファン層の拡大をみせている。この“歌力”に引き寄せられるリスナーが多いのだろう。
今期ドラマでもっとも印象的な主題歌といえば、『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)の感覚ピエロ「拝啓、いつかの君へ」。このドラマは、岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥ら演じる「ゆとり世代」が、日常の問題と向き合いながら“今”を生きていくストーリーだ。ドラマの公式サイトにある水田伸生監督の「ドラマにとって主題歌は、作品テーマの音楽的具現です」との言葉のとおり、作品テーマを代弁するように登場するバンドの演奏シーンが新しい。「ゆとり」という新時代のテーマが扱われているだけに、これまでにないオープニング映像が起用されているのだろうか。
これまで挙げたアーティストは、音楽性こそ異なるものの、歌声や歌詞に特出した新たな才能・魅力を持っている。また、新人アーティストの主題歌を起用するドラマは、テーマ設定が新鮮かつ現代社会に寄り添ったものが多く、作品に新たな“風”を取り入れるべく新人を起用する傾向があるのかもしれない。ドラマと主題歌は、それぞれを多くの人々へ届ける役割を相互に担っており、作品と楽曲のマッチングが重要であることは間違いない。今後もドラマと主題歌の関係性は、作品テーマやアーティスト性の多様化とともにますます発展を遂げていきそうだ。
(文=久蔵千恵)