自転車のサドルも買えず“痔”に…… 元アイドルが綴る極貧生活と“暗黙のルール”

元アイドルが綴る極貧生活と“暗黙のルール”

 2011年10月から2015年1月まで、アイドルグループ「怪傑!トロピカル丸」のメンバーとして活躍していた、山口めろん。現在はソロでのタレント活動を行っている。そんな彼女が、「電車賃すらなくなり、オタクから貰った大量のCDを売却」するほどに極貧だったアイドル時代の生活や、アイドル同士の関係などについて赤裸々に綴った『アイドルだって人間だもん!』を上梓した。

交通費も支給されず、収支がマイナスの日々

 山口めろんは兵庫県豊岡市生まれ。実家は「電車は1時間に1本で一両編成」「コンビニに行くにも車移動」という場所にあり、幼い頃から東京に憧れていたという。その想いを叶えるべく、大学進学を機に上京。ミスコンへの出場をきっかけでテレビの仕事を始め、芸能事務所に所属した。そんなある日、山口を入れた8人の女の子が事務所に集められ、社長からアイドルグループを組むことが伝えられた。それが「怪傑!トロピカル丸」だった。アイドルを目指してはいなかったものの、社長の説明を聞いているうちに夢が膨らみ「てっぺん目指すぞ!」と覚悟ができたという。

 しかし、その夢と現実は、余りにもかけ離れていた。同書で山口は「アイドルとしての収入は、ほぼゼロでした。それどころか、最初の二年間は交通費も支給されず、むしろマイナスだったことも……」と、その金銭的な内情を打ち明ける。「マネージャーが仕事帰りにメンバー全員をご飯に連れていってくれたり、三年目から交通費が出るようになっただけでも、だいぶ良心的な事務所なんです!」と、フォローもしているが、かなりの極貧生活だったことは事実のようだ。

人気アイドルと写メを撮って、そのアイドルのオタクにアピール

 アイドルとして日々のライブ活動があるため、フリーターほどバイトを入れることもできない。具体的には、以下のような状況だったという。

・収入はバイト代の月8万円のみ。毎月、食費や生活費に使える額は、たったの7000円
・毎週末、ライブ後に徹夜でバイトをしてそのまま寝ないでライブに向かう、という生活
・クレジットカードの審査が通らない
・自転車のサドルを盗まれたが、新しいサドルを買うことができずに乗り続け、痔を発症
・電車賃すらなくなり、オタクから貰った大量のCDをブックオフで売却

 華やかに見えるアイドルの生活の裏側は実は悲惨、なんていう話は、今や多くの人が知るところで、新しさはない。だが、つい最近までアイドルだった彼女が語る言葉にはリアリティーと重みがある。

 さらに金銭的な面だけでなく、事務所から「お前は、センターにいるべき人間ではない!」と告げられたり、人生初のデートをCD特典としてオタクに捧げたりと、精神的にも打撃を受けたエピソードについても語られている。

 また、アイドルを続けて行くうちに理解した「アイドル間での暗黙のルール」についても触れられている。それは「機嫌が悪いメンバーには話しかけない」「他メンバーのオタクを釣らない」というものだ。例え同じグループのメンバー同士でも、気を使わなければいけないのがアイドルなのだ。そして「人気のあるアイドルと対バンした時には写メを撮って、そのアイドルのオタクにアピールする」ことも必要だと、説いている。SNSやブログには、日々アイドル同士の仲良さ気な画像がアップされており、当然それは「単なる記念」というだけでなく、「営業」の意味もあることは想像できるが、それでもアイドル本人からそれを語られると、より現実味が増す。アイドルオタクにとっては、なかなか複雑な心境にさせられる告白だろう。

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