シングル『Take It Easy』インタビュー

RIP SLYMEが語る楽曲制作のスタンス、そしてグループの今後「大事なことはイメージの共有!」

 リップスライムから新曲が立て続けに到着した。まず2月24日に、J1に所属するサッカークラブ、FC東京とタイアップした「Baile TOKYO」を配信リリース。続いて、3月2日にCDシングル『Take It Easy』を発表。こちらは松山ケンイチ主演の話題映画『珍遊記』と強力タッグを組んだ話題作で、表題曲がオープニングテーマ、カップリングの「Drop!」が同映画のエンディングテーマになっている。昨年9月に通算10枚目のオリジナルアルバム『10』をリリースし、今年3月でメジャーデビュー15周年を迎える彼ら。今回は5人のメンバーの中からRYO-Z、PES、SUの3人に、新曲の制作背景を伺いながら、タイアップとの向き合い方についてもインタビュー。今後のグループの進むべき道についても語ってもらった。(猪又 孝)

RYO-Z

「バカは本気でやれ」(RYO-Z)

ーーリリース順に新曲について訊かせてください。FC東京の応援ソングとなった「Baile TOKYO」は、FUMIYAさんがトラックメイクを担当したサンバ調の楽曲に仕上がっていますね。

RYO-Z:サッカーといえばブラジル、ブラジルといえばサンバだろうという発想がFUMIYAにあったみたいで。先方からもそういうリクエストがあったんですよ。

ーーこれはFC東京のドキュメンタリー映画「BAILE TOKYO」の主題歌にもなっています。歌詞はどんなテーマで作っていったんですか?

PES:サッカーについてはあまり詳しくない5人ですが、「応援」についてはすごくできるんで(笑)、そこに焦点を当てて作ったんです。知り合いにFC東京ファンがいたりとか、周りにはサッカーが好きな人が多いんで助言を頂きながら、スタジアムでチャントとして歌ってくれる感じになればいいなと思って作っていきました。

RYO-Z:「Baile」は、ポルトガル語でパーティーっていう意味なんですけど、相手チームに楽勝な状態、余裕綽々でもうパーティーのように戦えるような試合展開をバイリって言うそうなんです。で、パーティーっていうのは僕らのイメージにも合うから、「Baile TOKYO」っていうタイトルにしようと。それが決まってからは作業が早かったですね。

SU:そしたら、映画のタイトルも、「BAILE TOKYO」にさせて頂きます、って。良かったです、お手伝いができた感じがあって。

ーー続いてリリースされたシングル『Take It Easy』は、どちらもPESさんの作曲。表題曲の「Take It Easy」はどんな発想でつくっていったんですか?

PES:バンドワゴン的な発想ですね。

RYO-Z:ロードムービー感というか。曲調の雰囲気と相俟って、すぐに歌詞のテーマはイメージできたんで、何の迷いもなくサッとできました。

SU:「気楽に行く」っていうテーマは自分たちの実生活にも通じることですからね。歌詞は書きやすかったです。

ーービートの音色は馬がパカパカ走ってる音をイメージして作ったんですか?

PES:デモの段階ではそんなに馬の音にしようとは思ってなかったんですけど、ミックスを終えたら結構ソリッドな音になって、「パッカパッカ」と聞こえるようになったんですよ。

ーーもっとも映画では、倉科カナさん演じる僧侶は、「西遊記」の三蔵法師のように馬に乗ってないですしね(笑)。

PES:そう、歩いてるから(笑)。原作だと馬に乗ってるんですけどね。原作はリアルタイムで読んでたから、原作のイメージで作ってるところが結構あるんです。

ーーイントロの中華風のリフも、原作がモチーフにしている「西遊記」からの着想ですか?

RYO-Z:そうですね。わかりやすくしようっていう。でも無理やりチャイナなんですよ(笑)。「珍遊記」はチャイナな感じがなくてもいいくらいの設定だし。

RYO-Z:でも、映画の完成試写を見たときに、その、いい意味でのなんちゃって感がハマったなと思いましたね。

ーー「Take It Easy」を聴いたとき、そういうなんちゃって感とか、ちょっとお気楽に作ってる感じが初期のリップを彷彿させたんです。映画からのオファーで作った曲だけど、図らずもリップがもともと持ってる飄々とした感じを出す曲になったんじゃないかなって。

RYO-Z:うん。リップらしさは出ちゃいましたね。

SU:映画もそういう感じですからね。真剣に撮られてるんでしょうけど、あんまり真剣にやっててもな、みたいなところもありそうじゃないですか。東映のマークもうんこになってるくらいだし。

PES:あと、作ったのがツアー中だったんで無理なく作れるように意識したところもありますから。移動していくというか、旅してる感じがそのときの自分たちともリンクしてるから、その感じが出たらいいなとも思ってましたし。

ーーカップリングの「Drop!」は、どんなことをテーマに作ったんですか?

PES:「やるぜ、やるぜ」と言ってて、なかなかやらない人たちっていう。昔、イベントのオープンマイクのときに「始めよっか、始めよっか、始めよっか」つってて、始まらないっていうのがあって。

RYO-Z:それ、俺の話じゃねーか(笑)。

PES:そういうフリースタイルをRYO-Zくんがやってて。「それ、いいなー」と思って、そのイズムを注入しようと。

ーー映画も脱線続きで、本当に旅をする気があるのか?っていう内容ですしね。

PES:そう。旅が続かねぇーんだっていう(笑)。

SU:日常生活でもよくあることですからね。「やるやる」と言っててやらないっていうのは。

PES:SUさんはやらないからね(笑)。

ーー「Drop!」というタイトルはどんな発想から生まれたんですか?

RYO-Z:どんな曲にするか話していたときにPESくんに、「ほら、ウンコとか、そういう世界観だから、そういう感じで、ダーン!とか、どかーん!みたいなのない?」って言われて(笑)。「何それ?」って思いながら、じゃあ、Drop da shitみたいなことか……。「あ、Dropでいいんじゃね?」みたいな。

PES:そこで単純に考えると「Yeah! 落とすぜ、落としてるぜ、落とすぜ」って言い続ける曲になるわけじゃないですか(笑)。ライブで4MCがずーっと5分くらい、「落とすぜ! かますぜ!」って言われたら、「もうわかったよ」ってなっちゃうし、そう言われても「今、落とされてる最中なのか、落とされたあとなのか」よくわからないなって。だったら、ずーっと「落とすぜ」って言っといて落とさないっていう曲のほうがいいなと思ったんです。「あ、落とさないんだ」っていうオチがひとつできるからいいなって。

ーー「Drop!」を最初に聴いたとき「FUNKASTIC」を思い出したんです。それに「FUNKASTIC」は、FUNKには悪臭っていう意味があるから、悪臭→ウンコ→便器っていう発想で、ジャケットを便器のデザインにしていた。そこからリンクして、タイトルやテーマを「Drop」にして、曲調も「FUNKASTIC」っぽくしたのかと思ったんです。

PES:違うんですよ。原作はいきなり切なくなる感じで終わるんで、最初はミドルテンポの曲をつくったんです。だけど、「映画のほうはバカバカしく終わるんで、派手な方向で」と言われ急遽もう一曲作ったのがコレなんです。そのときに「FUNKASTIC」みたいな雰囲気がいいって言われて。

SU:だから結果的に繋がったんだよね。そういえば前に俺たちうんこしてるわ、と思って。「FUNKASTIC」は便器をモチーフにしてて、今回はそれをモチーフにして便器にうんこを出したっていう(笑)。

 

ーー今回のCDのジャケットは「うんち」をデザインしています。これは誰の発案だったんですか?

PES:(ジャケットをデザインした)GROOVISIONSさんと話してるときに出たアイデアで。本当は画太郎先生の絵を使わせてもらえたら、と思ってたんですけど、時間がない中でお願いするのも失礼な話だし、もしOKが出たら使わせてもらいたいということにして。あと、画太郎先生は、漫☆画太郎と名前に「☆」が入ってるから星をモチーフにするアイデアもあったんです。そんなことを言いつつ、モロにうんちにしちゃうとさすがに下品だから、鏡餅みたいなうんちもあり得るんじゃないかとか話してて。

SU:うんこの上の「ひょい」がないヤツって言いながら(笑)。現実のウンコは大抵そっちだから、とか(笑)。

PES:そういう話を大の大人が真剣にミーティングしてたんですよね。

ーーでも、うんちを打ち出してきたところにも初期のリップっぽさを感じたんですよ。うんちっていう馬鹿馬鹿しいモチーフを、適度にナメてる感じを伺わせながらスタイリッシュに打ち出すっていう。リップスライムが持つ、おフザケ感とオシャレ感とトンガリ感の絶妙トライアングル。それを今回のシングルには感じたんです。

SU:まあ、ウンコをデザインしてジャケットにした人はいないでしょうね。

ーーそれを平均年齢40歳のグループがやるか!?っていう。そういう振り切り感とか遊び心も痛快でした。

PES:決して世の中をナメてるわけじゃないんですよ。だってミーティングを重ねてやってますからね。

RYO-Z:うんちだけど、本気も本気だからね。赤塚不二夫先生からタモリさんが受け継ぎ、そのタモリさんから受け継ぐ「バカは本気でやれ」っていうことじゃないですか。

ーーまさに。リップの「小ネタに本気出す性格」が、今回のうんちジャケには出てますよね。

PES:わかります、それ。小ネタに本気出すんですよね、ウチらは。

ーーたとえば5万人野外ライブの「SUMMER MADNESS 03」のときとかね。SUさんが落書きしただけのキャラクターを巨大なバルーン人形にしてアンコールのハイライトで出すっていう。

SU:意味わかんないですもんね(笑)。

RYO-Z:悪ふざけだよなぁ、本当に。

PES:でも、悪ふざけをちゃんとやってるかどうかの自覚ですよね、大事なのは。狙ってるとかじゃなくて、本気でマジメに「ウケる」と思ってやってるから。「いい」と思ってやってないといけないよっていう、そこの自覚はありますね。

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