ジェフ・トゥイーディが明かす、良質な音楽を作り続ける秘訣「お互いのスペースを尊重すること」

ジェフ、ウィルコとトゥイーディを語る

 シカゴを拠点に活動するロックバンド、ウィルコのフロントマンであるジェフ・トゥイーディが、18歳の息子スペンサーと結成したトゥイーディ。彼らの初来日公演が3月、東京と大阪の2カ所で行われる。

 もともとトゥイーディは、ジェフの“初めてのソロ・プロジェクト”としてスタートしたもの。それが、デモレコーディングをスペンサーのアシスタントにより進めていくうち、いつしか親子デュオのカタチになったという。スペンサーがドラムを叩き、その他の楽器をジェフがほとんど一人で演奏して作り上げた、14年リリースのファーストアルバム『スーキーレイ』は、ヒネリの効いたコード進行に「ジェフ節」としかいいようのないヴォーカル&メロディが乗った、シンプルなバンドサウンドだった。これは02年にジェフが、ジム・オルーク、グレン・コッチェ(ウィルコのドラマー)とともに結成したルース・ファーにも通じる部分がありつつも、こちらはもっと密室的な響きだ。アルバムタイトルは、ジェフの妻スーザンの愛称である「スーキー」をもじったもので、インナースリーブにはトゥイーディー家の写真をあしらっていたり、歌詞は「夫婦愛」や「親子愛」をテーマにしていたりと、非常にパーソナルな仕上がりとなっている。

 それにしても、幼い頃からグレン・コッチェの手ほどきでドラムを始め、7歳でザ・ブリスターズを結成するという、スペンサーの実力たるや驚くばかり。そればかりか、ファッション・ブロガーとしてカリスマ的な人気を誇るタヴィ・ジェヴィンソンとともにウィルコのPVを製作するなど、音楽以外の才覚も表しているのだから末恐ろしい。来たるトゥイーディの来日公演は、6人組のバンド編成でおこなわれるというから楽しみだ。

 ウィルコとしては、昨年7月に通算9枚目のアルバム『スター・ウォーズ』を、プロモーションもなく突然の無料配信したジェフ。04年の5作目以降、最新作『スター・ウォーズ』まで5作連続でグラミー賞にノミネートされ、また前作『ザ・ホール・ラヴ』より自主レーベルdBpmからのリリースとなったこのアルバムは、グラムやガレージ、ハードロック色の強いサウンドが印象的だった。そんな彼に、トゥイーディのこと、家族のこと、そしてウィルコのことについて聞いた。(黒田隆憲)

「(『スーキーレイ』は)家族との時間をたくさん費やして作り上げていった」

ーーもともとトゥイーディは、ソロ・プロジェクトとしてスタートしたものだと聞きました。これまで「ソロ」としての音源が一度も出ていなかったこと自体が意外だなと思うのですが、このタイミングでソロ音源の制作に取り掛かった理由は?

ジェフ(以下J):ソロ・プロジェクトは数年前から頭にあったんだ。ウィルコではもちろん自分のやりたいことは出来ていたんだけど、俺はウィルコのメンバーの中で唯一、ソロとしての活動をしていなかった。だから全て一人だけでやるっていうのはとても自由で面白そうだと思ったんだよ。

ーースペンサーにはデモの段階からかなり手伝ってもらっていたそうですね。

J:スペンサーの意見はとても尊重しているし、彼の音楽的感性は素晴らしい。けど今回は、どちらかというとサポート役として色々尽くしてもらったよ。ドラムは全部彼がやったんだ。俺のアドバイスなんてほとんどなしでね。スペンサーには音楽を始めた当初から才能を感じたし、スキルはもちろん、何よりもその成長過程で彼が自信をつけていくのを見るのが、俺にとってはとても嬉しかった。

ーーファーストアルバム『スーキーレイ』は、楽曲のテーマはもちろんタイトルからアートワークに至るまで、かなりパーソナルな内容となりました。この構想は、スペンサーが入る前から決まっていたのでしょうか。

J:そうだね。妻が病に冒されているということが分かってから、この作品は「家族プロジェクト」になった。妻の癌治療と作品の制作が同時進行で行なわれ、ツアーもちょうどなかったこともあって、家族との時間をたくさん費やして一緒に音楽を作り上げていったんだ。いい意味で気も紛れたし、家族みんなにとってよかったんじゃないかな。妻と下の息子サミーは完成までの制作過程をずっと見てきて、たくさんのサポートをしてくれた。完成したアルバムには疑いの余地は何もなかったよ。妻はもちろん、みんなすごく気に入ってくれたんだ。

ーー今は奥様の状態も安定していますか?

J:ああ、順調だよ。

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