ぼくりり、ミセス、井上苑子、シンリズム……音楽シーンで10代アーティストが台頭する背景とは?

 自身よりも年上の音楽ファンや、アーティスト・クリエイターらによって見出された先の2アーティストとは対照的に、シンガーソングライターの井上苑子は10代を中心とした同世代に支持されているアーティストだ。

「ツイキャスやMixChannelなど、個人や、友達・恋人との動画を気軽にアップできる、言ってしまえば“リア充コミュニティ”のツールから人気が出た井上苑子さんの存在は、同世代に支持されているアーティストならでは。10代の共感を誘うような恋愛ソング・日常の歌を今の世代の言葉で綴っている楽曲は、確実に同世代に届いています。ネットの使い方が世代ごとに変化するなかで、彼女は新しい時代の等身大を表すシンガーになっていると言えるでしょう」

 楽曲の作詞・作曲・編曲を手がけるフロントマン大森元貴(Gt&Vo)とリーダーを務める若井滉斗(Gt)、1996年生まれの2人がバンドを牽引するMrs. GREEN APPLEも、同世代の音楽ファンから多くの支持を集めている。彼らの場合は、ネット上のサービスを介し活動の幅を広げた先の3組とは異なり、ライブハウスという“リアル”の場での人気が、インターネットを介して同世代以外の音楽ファンに伝わっていった。

「Mrs. GREEN APPLEの人気は、活動初期はメディアへの露出もない中、ライブの動員だけが一気に増えていった印象があり、andropがブレイクしていった過程に近いと感じました。ライブを通して伝わる楽曲のキャッチ―さ、少年漫画の主人公のような“青さ”が、同世代の音楽ファンの心を着実に掴んでいきました。また、BUMP OF CHICKEN、RADWIMPSといったさまざまなバンドがテーマにしてきた『切なさ』『無常感』『希望を見据えるイメージ』などを体現している、良い意味で日本のロックシーンの直系にいるバンドですね」

 同じ10代のアーティストでも、人気となるきっかけや支持を集める対象も千差万別だ。しかしインターネット・メディアの発展により、10代といった若さでもその才能が見出されやすくなっているのは間違いない。それぞれのアーティスト性や音楽性に合ったインターネットの活用こそが、音楽シーンでの台頭の鍵を握っているのではないだろうか。

(文=編集部)

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