miwaのバラード集がチャート1位に J-POPにおける“歌姫”のあり方はどう変化した? 

 しかし紅白に出ていた女性歌手たちは、もう本当にピュアで可愛いかった。緊張しながらとびきりの笑顔をハジけさせた大原櫻子。歌声は強いけれど表情は小動物系の愛らしさに満ちたSuperfly。さらにmiwaは歌声も笑顔もルックスも完全に男子(おっさん含む)をメロメロにさせるものでした。「いかにもディーバ」な目ヂカラを放っていたのは椎名林檎とMISIAくらい。ギャル系ディーバだったはずの西野カナも、「トリセツ」のヒット以降はカワイイお嫁さん志望系のフンワリ感を押し出しているようで。あぁ、これはもうディーバの時代が完全に終わったのだと感じました。主体的にエロスをアピールするタフな歌姫よりも、男から「カワイイ」と言われる素直な女の子シンガー。どちらが良い悪いという話ではなく、J-POPの女性歌手の主流は、そのように移り変わっているわけです。

 そんな長い前フリからの、チャート上位3位に注目。すべて初登場で、3位は『THE LAST』が大好評のスガシカオ。2位は倖田來未『WINTER of LOVE』。1位がmiwaの『miwa ballad collection〜graduation〜』。ちなみに2位と1位は自身初のバラード・コレクション作品です。待望の新譜とは異なるベスト的なバラード集。もちろん購買層は異なるのでしょうが、倖田來未が普及させた「エロかっこいい」よりも、「まっすぐでかわいい」miwaのほうが売れるという現実。女性が主体的にエロスを振りかざすことを是としない風潮は、今後さらに強まっていくのかもしれません。

 あ、もちろんポップ・ミュージックにエロスは必要ですよ。需要もあります。3位のスガシカオ、この人ほどグロテスクでエロティックで粘着質なことを歌い続けている人、他にいないですから。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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