関ジャニ∞が見せた音楽的挑戦とは? 矢野利裕が最新アルバムの“元気なサウンド”を分析

 面白いのは、そのような「元気」なサウンドを追求するなかで、微妙にアメリカン・ポップス的なものが参照されていることである。いちばん露骨なのは、「バッバドゥビドゥー」と歌われる「ナイナイアイラブユー」で、この曲は、フォー・シーズンズのようなコーラス系のオールディーズをパロディ的に模した曲になっている(ファルセットがないのは寂しいが)。ルベッツの「シュガー・ベイビー・ラブ」を思い出した人もいるかもしれない。あるいは「ナントカナルサ」は、ベイ・シティ・ローラーズ「サタデー・ナイト」のあのノリが意識されている。「前向きスクリーム」のビートは、やはり「MICKY」だ。「アメリカン・ポップス的なもの」というのも微妙な言い方だが(実際、上記ミュージシャンにはイギリス人も含まれている)、要するにビートルズ以降的な「ロック」とは異なる、芸能音楽としての、楽しくてどこか軽薄なロック/ポップスのノリだ。『関ジャニ∞の元気が出るCD』は多彩なサウンドに彩られているが、この楽しくて軽薄なノリをけっして手放さない。そして、そのようなノリこそが本作の「元気」さを支えているのだ。歌詞なんていうのは、音楽がもたらす情報のほんの一部だ。本作において、僕らは歌詞の内容以上に、サウンドの軽みにこそ「元気」をもらうのだ。

■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

※記事初出時、内容に一部誤りがございました。訂正してお詫びいたします。

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