『イナズマロック』発の新進バンド、Thinking Dogsが手にした強力なバックアップと試練
しかし、そういった要素がバンドの足を引っ張ることがあるのも事実だ。Thinking Dogsの場合、特にそのルックスの良さもあり、一歩間違えばアイドルバンドという偏見を持たれてスルーされてしまう可能性もある。では彼らの実力はバンドとしてどうなのかというと、(意外にもと言っては失礼だが)これがかなりしっかりしたものだったりする。そもそもデビューのきっかけとなったのが、昨年9月に開催されたT.M.Revolution主催の野外フェス『イナズマロック フェス 2014』との連動型オーディション『イナズマゲート 2014』へ出演したことで、その際にはライブパフォーマンスが評価されファイナリストに選出。最終的には準グランプリを獲得するという結果を残しているのだ(プロフィール上ではその後「伝説のプロデューサー、サイモン利根川に見いだされ」云々と記されているが、ここではあえて触れないでおく)。
メンバー全員が25歳前後で、影響を受けたアーティストもL'Arc-en-CielやSIAM SHADEなどの日本のロックバンドやLOSTPROPHETS、FALL OUT BOY、LIMP BIZKIT、LINKIN PARKといった海外のエモ/ラウド系などさまざま。そういったアーティストの楽曲をコピーしてきたこともあってか、ライブ映像を観る限りでは楽器隊のテクニックは安定したものという印象がある。現時点ではメンバー書き下ろしによるオリジナル曲が発表されていないので、そういったアーティストからの影響を楽曲自体から感じ取ることは難しいが、各メンバーのプレイからその片鱗は少なからず感じられるだろう。
この夏にはデビューのきっかけとなった『イナズマロック フェス 2015』への凱旋を果たしたばかり。バンドとしての個性の確立にはもう少しだけ時間がかかるかもしれないが、恵まれた才能とルックス、そして恵まれた楽曲と周囲の人間たち、これらをうまく活用しつつ自身を磨き続けていれば、この先間違いなく「良質な楽曲を増産するカッコいいロックバンド」へと成長するはずだ。まずはその片鱗が散りばめられた最新シングル『3 times』を聴いて、Thinking Dogsの真価を確かめてほしい。
■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。