スガ シカオは新作『THE LAST』で何を表現する? 柴那典がアルバム制作ノートなどから探る

スガ シカオ、『THE LAST』の片鱗

 2016年1月20日、6年ぶりのアルバム『THE LAST』をリリースするスガ シカオ。かねてから「50歳までに自身の集大成となるようなアルバムを完成させたい」と語ってきた彼が、その言葉を実現させるべく全力を注ぎ込んだ一枚だ。

 その片鱗がいよいよ見え始めている。

 10月14日にはアルバムのティーザー映像と、インベカヲリ★が撮り下ろしたアートワークが公開された。

スガ シカオ - New Album 『THE LAST』予告編

 そして、昨日11月2日にはNHK総合にて『プロフェッショナル 仕事の流儀 放送10周年スペシャル スガ シカオ』がオンエアされた。番組は新作のレコーディングを進めるスガに密着取材し、その制作過程をドキュメントした内容。共同プロデュースをつとめる小林武史とのやり取りや、一人悩みながら歌詞を書き進める様子など、かなりレアな映像も含んだ内容となっていた。

 また、スガはオフィシャルメルマガで5月から「アルバム制作ノート」を定期的に配信している。ニューアルバムが出来ていく過程を本人の言葉で同時進行的に解説し直接リスナーに届けるという試みだ。こちらは10月末現在で「その22」まで書かれている。

 そこで、この記事では、これらの断片的な情報から、来たるべきニューアルバムで彼が表現しようとしているものを探っていきたい。

 アルバムに向けて30曲以上のデモを作り、そこから全11曲に絞り込んだという『THE LAST』。まず、その基盤となっているのが「アストライド」という楽曲であることは間違いないだろう。

スガ シカオ - アストライド (Short ver.)

 前作以降、「傷口」や「Re:you」などインディーズ盤や配信限定も含めて様々な曲をリリースしている彼だが、アルバムに収録される既発曲はこの1曲のみ。2013年にシングルとしてリリースされたこの曲は、2011年に事務所とレーベルを離れてゼロからの再出発を果たしたスガが掴みとった希望を描いた一曲だ。

 そして、小林武史の「アストライドの“序章”のような曲を作ってみたら」という提案から生まれた一曲が、アルバムの世界をさらに広げる足がかりとなった。それがティーザー映像で披露され歌詞もいち早く公開されたバラード「ふるえる手」だ。

 歌詞の中には、アル中でいつも手がふるえていたというスガの亡き父親が登場する。そこには、まだサラリーマンだった20代後半の頃、音楽で食べていくことを決意したときに彼が父親に言われた言葉が書かれている

〈ぼくが決意をした日 “やれるだけやってみろ“って その手が背中を押した ”何度だってやり直せばいい“〉

 この〈何度だってやり直せばいい〉というフレーズは、そのまま「アストライド」のサビでリフレインされる。デビュー前のまだ何者でもなかった時期にまで遡り、そこでの決意と今の意思とを生々しくつなぐような2曲になっている。

 リリースにあたってのコメントでスガは「J-POPになる前のスガ シカオ。この2度目のメジャーデビューアルバムは、そんなアルバムです。FUNKでもなく、ROCKでもなく、剥き出しのスガ シカオそのものなんです」とコメントしているが、まさにそれだけの重みのある内容と言っていいだろう。

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