BABYMETALのライブアルバムを比較 彼女たちのパフォーマンスはどう進化した?

定番曲に見るSU-METAL、MOAMETAL、YUIMETALの成長と自信

 BABYMETALは曲数が限られており、どのライブへ足を運んでも、セットリスト自体は順番こそ違えど内容はそう変わらない。しかし、だからこそ真摯に耳を傾けようとするし、歌い方や彼女たちの発する声からも様々な変化がみてとれる。

 例えば、Disc1の1トラック目の『メギツネ』では、武道館公演初日を収録した過去のライブアルバム『LIVE AT BUDOKAN〜RED NIGHT〜』と比較すると、心なしかMOAMETALとYUIMETALの煽る声が太い。成長によるものという以上に、その裏にはステージへみなぎる自信を感じてやまない。

 彼女たちの来歴を重ねると、そもそも今作に収録されたライブは、14年に“武者修行”と称して走り続けた相次ぐ海外公演の集大成、そして、さらなる世界進出に向けた決意表明の場のようにもみえた。その変化は、SU-METALのソロ曲からもにわかに感じ取れる。

 Disc1の4トラック目『紅月-アカツキ-』では、歌い出しからSU-METALがメロディにあえて“溜め”を作り歌うさまを味わえる。先の武道館公演初日では、拍子の一つひとつを大切に刻みながら歌っていた印象をおぼえるが、一見、わずかにも思える表現の違いからは、歌に駆けるSU-METALの心情の変化を読み取れる。

 そして、やはりピアノとストリングスが奏でるイントロからの一連の流れは、ライブ中のほんの一瞬の“静”を表しているというべきか、切なくも胸を熱くさせてくれる。

目を閉じれば現場に立てる「戦国ウォール・オブ・デス」のアナウンス

 アンコールを収録したDisc2の3トラック目。ライブの最後を飾った『Road of Resistance』には、メタルで世界を1つにするというBABYMETALに課せられた使命はもちろん、我々ファンも“メタルレジスタンス”の担い手であることを匂わす“鋼鉄の合戦”を告げるアナウンスが音源のみでは初めて収録された。

 楽曲自体の初披露は14年11月のロンドン公演で、完全な主観とはなるが、この曲が第3章の核であったのだろうとずっと考え続けている。これまでも例えば、場内を駆け巡るレーザービームが印象的なDisc1の2トラック目『いいね!』や、Disc1の7トラック目にある『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』など、コール&レスポンスが求められる楽曲はあった。

 しかし、『Road of Resistance』に限っては、ステージと客席が一体となれるようシンガロングパートがあらかじめ設けられている。加えて、歌詞に「僕ら」とはっきりと明記されているのはこの曲以外になく、とにかくステージにすがるしかなかったBABYMETALのライブにおいて、この曲により、客席からも明らかな形で自発的にライブへ参加できる時間が生まれた。

 ライブアルバムは聴覚のみを刺激されるため、当日の光景が、不思議とより鮮明に蘇ってくる瞬間もある。興奮のさなか、現場では行き届かなかった部分に気づいたりするのも魅力のひとつである。

 BABYMETALはとりわけライブが核となるため、本音をいえば、すべての公演を音源化していただきたい。現在、ライブでの定番になりつつある「ちがうちがう」のフレーズが耳から離れない新曲はもちろん、14年12月に披露された『おねだり大作戦』ならぬ通称“カツアゲ大作戦”など、手元でいつでも再生できるようにしておきたいものがまだまだある。

 しばらくは今作をエンドレスリピートする生活が続きそうだが、ふと懐かしさにも似た感覚をおぼえ、オリジナルの音源に原点回帰する瞬間がまた訪れそうである。

■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。

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