キスマイは「国民的グループ」への階段を登る? ナオト・インティライミ提供の新曲を分析

 そして何より大きなポイントは、このシングルが2カ月連続リリースのうちの一枚で、この「AAO」の作詞作曲をシンガーソングライターのナオト・インティライミが、続いて11月にリリースされるシングルの表題曲「最後もやっぱり君」を、つんく♂が手掛けていることだ。

 これまでのキスマイのシングル曲は、基本的にはアーティストではなく作家が手掛けている。「SNOW DOMEの約束」でトライセラトップスの和田唱、「光のシグナル」で東京カランコロンのせんせいを作詞に起用したことはあるが、こと作曲に関しては専業作曲家がほとんどだ。そう考えると、このタイミングでのナオト・インティライミの起用は大きなターニングポイントと言えるだろう。

 では、肝心の楽曲はどうか。この「AAO」は80年代のディスコ/ブギーのサウンドを彷彿とさせるサウンドとなっている。イントロのクラヴィネットからファンキーにうねるベースライン、ワウ・ギター、派手なホーン・セクション、そして四つ打ちの軽快のビートに乗せて4拍目のところで「パパン!」とハンドクラップが入るリズムが大きな特徴。これは「Thank youじゃん!」とも共通する曲調。つまり彼らにとっての「王道」をストレートに狙いにいったものになっている。

 ちなみに、つんく♂が提供した「最後はやっぱり君」の曲調は温かみのあるラブバラード。玉森裕太主演の映画『レインツリーの国』の主題歌で、こちらもやはり「王道」の路線だ。

 アルバム『KIS-MY-WORLD』の初回限定盤では初のリミックスCDを収録しbanvoxやAvec Avec、TeddyLoidなど気鋭の若手トラックメイカーを起用するなど「攻め」の姿勢を見せていたキスマイ。今回の2ヶ月連続シングルは、大物アーティストやプロデューサーを起用しポップスの王道を歩むグループの今を象徴するリリースと言えるだろう。

 そして、このターニングポイント以降、さまざまなアーティストやシンガーソングライターがキスマイの楽曲を手掛けるようになったら面白い。個人的には、星野源が彼らに本気のアイドルポップスを曲提供したら抜群に似合いそうな気がするが、どうだろう。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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