おやじロックの真髄「UDO MUSIC FESTIVAL」の愉楽と蹉跌ーー市川哲史が幻のフェスを振り返る

 とはいえ遠路はるばるの出演アーティスト様たちには、それはそれは悪夢だったろうと積極的に同情したものだ。

 特に2日目は観客が前日の3割しかいないわ、朝から霧雨が降り続いたあげく止んだら止んだで濃霧が発生してしまい、30m離れたらステージが霞んで見えないという<生き地獄>と化した。

 トリを飾ったKISSは初の野外公演@日本ということで、入念なリハまでこなしての来日。他の出演者が全員ただの暗幕をバックに演奏した中、KISSだけは電飾もセットもメガトン級だ。しかも野外だけに「遠慮はなし」と大仁田厚8千人分の火薬特効雨あられだし、ポール・スタンレーは堂本光一ばりのワイヤー・アクションwith滑車で、観客席最後方のPAテントまで空中遊泳して見せた。客がいなけりゃ単なる駐車場の上空を――。

「今夜ここに4万人ものオーディエンスが集い……後ろを振り向くんじゃねえ!」

 ポール・スタンレー今宵最初のMCを、私は一生忘れはしない。

 ちなみにドゥービーズのDVD/BD『ストーリー・オブ・ザ・ドゥービー・ブラザーズ LET THE MUSIC PLAY』(発売中)の日本盤ボーナストラックで、なんとウドーちゃん祭りライブを6曲も目撃できるのだ。そして、閑古鳥が1羽も見当たらない魔術的なカメラワークが、観る者の涙を誘うに違いない。ただし熱唱するトム・ジョンストンの目は、明らかに何かに怒っているのであった。

 「汗をかかない」「トイレに並ばない」「メシがすぐ食える」。

 未来永劫ありえないような三題噺ロック・フェスティバルが9年前、日本で開催されていたなんて、嘘みたいだけど本当の話なのだ。

■市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)

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