a crowd of rebellionが最新作で見せるバケモノ的予感ーー深化するラウドロックとは?
今年3月にシングル『The Crow』でワーナーミュージック・ジャパンからメジャーデビューを果たした5人組ロックバンド、a crowd of rebellionがメジャー第2弾作品として7曲入りEP『Daphne』(ダフネ)を9月2日にリリースする。
テン年代後半を担っていくであろう新世代バンドの1つである彼らの魅力は、メタルコアやスクリーモを軸にしながらも単にメタリックに終わるのではなく、J-POP的色合いやボカロ曲、さらには普遍的なギターロックの要素すら感じさせる、いかにも現代的な“ごった煮”感を兼ね備えているところ。そのへんについては『The Crow』リリースタイミングにコラムを書いているので、そちらを参考にしてほしい(参照:「スクリーモ、J-ROCK、ボカロ……すべてを飲み込む新世代バンドa crowd of rebellionの魅力とは?」)。
さて、その『The Crow』から約半年ぶりに発表されるEP『Daphne』について話題を移そう。この印象的なタイトルは、ギリシア神話に登場する女神の名前で、ダフネのほかにもダプネーと呼ばれることもある。またこのダフネには月桂樹という意味もあるのだが、これはアポロン神に求愛されるも逃げるダフネが、最後に自身の体を月桂樹に変えてしまったことが由来。アポロン神が頭に月桂冠をのせているのは、ダフネに対する永遠の愛の証なのだと言われている。
EPは「-Apollon-」と題したインストゥルメンタル曲からスタートし、表題曲である「Daphne」で幕を降ろす。ジャケットのアートワークも相まって、どことなくコンセプチュアルな作品のようにも感じられるが、もちろん1曲1曲を抜き出して聴いても純粋にミクスチャー色の強いラウドロックを堪能することができる。そしてその楽曲は前作『The Crow』にあった“ごった煮”感をより進化させた……いや、深化させたものとなっている。
例えばインスト曲「-Apollon-」から間髪入れずに始まる「BLACK ANTHEM」は、“これぞa crowd of rebellion”と呼べる“ごった煮”感が楽しめる。近年のメタルコア的なオープニングから、海外のメタルバンドDragonForceにも通ずる高速ビート&ツインリード、ひたすら気持ちいいキメパートを経てサビではボカロ曲的な美メロが登場し、ジャジーなピアノフレーズを含む小休止から突然のブレイクダウン、さらにはラグタイム的テキストの和みパートやオールドスクールメタル調フレーズまで飛び出す始末だ。
これだけ緩急の激しい劇的展開を持つ楽曲となると、きっとDREAM THEATERみたいに10数分の超大作なんだろうなと思えてくるが、実際にはこの「BLACK ANTHEM」のランニングタイムは4分にも満たない短さ。このa crowd of rebellionの楽曲が面白いのは、実はどの曲も4分前後、長くても5分は超えないものばかりだというところ。作曲をしたことがある人なら共感してもらえるかもしれないが、例えば1曲の中に複数の異なる要素を織り交ぜようとすると、必要以上に長くなってしまうことがあると思う。複雑な展開を持つ楽曲ほど長尺だったりするメタルシーンに目を向ければ、よりご理解いただけることだろう。しかし彼らはこれらをすべて4分間に凝縮する……いや、これは彼らに限ったことではなく、サンプリングであったり「カット / コピー / ペースト」という行為がごく当たり前のものとして日常に存在する世代だからこそなし得ることなのかもしれない。そういう意味ではこの“詰め込んだ”感はどことなく「ニコ動」以降の文化にも通ずるものがあるし……昭和末期に10代を過ごした自分からしたら、ロックという音楽がとんでもないところまでたどり着いたんだな、と改めて実感させられた1曲なのだ、この「BLACK ANTHEM」は。
もちろんこの「BLACK ANTHEM」だけにとどまらず、このEPにはa crowd of rebellionの多面性が色濃く表れた楽曲がズラリと並ぶ。時にこれでもかと疾走し、時には鋼の斧を叩き付けるかのように重い音を聞かせる。どことなく性急さを感じさせる展開は、アポロン神の求愛から必死で逃げるダフネの姿にも重なるところがある。そしてクライマックスの「Daphne」は映画やミュージカルのクライマックスを彷彿とさせるアレンジだ。7編からなるショートムービーのエンディングにピッタリの1曲と言えるだろう。旧世代ならこの一連のストーリーをフルアルバムで(もしかしたらCDの容量をフルで使って)表現したのかもしれないが、彼らの場合は約27分というコンパクトさ。もっとも、その中身はフルアルバム以上の濃さなのだが。
この『Daphne』はある意味、バケモノ的な1枚なのかもしれない。聴き終えたときに余韻を感じるどころか、アドレナリンがドバドバと放出しっぱなしでまたオープニングから聴き返したくなる中毒性すらあるのだから。そんなa crowd of rebellionがこの先、ロックバンドとしてどんな進化(深化)を遂げていくのか、このEPを聴いてしまったらただ楽しみでしかないはずだ。
(文=西廣智一)
■リリース情報
『Daphne』
発売:2015年9月2日
価格:¥1,800(税抜)
1. -Apollon-
2. BLACK ANTHEM
3. This is Liiiiiv[e]
4. Smells Like Unknown
5. Iris no hana
6. Never Say A Gain
7. Daphne
■ライブ情報
「a crowd of rebellion ”Daphne tour” 〜アポロンの孤独に勝てるかな???〜」
11月23日(月・祝) 愛知・池下 CLUB UPSET
11月28日(土) 大阪・梅田Zeela
12月4日(金) 東京:新代田FEVER
12月13日(日) 新潟:GOLDEN PIGS RED STAGE