『ラブライブ!』声優のソロデビューはなぜ増えている? さやわかが作品とプロジェクトの特性を解説
4月30日よりスタートした『ラブライブ!サンシャイン』においても、新ユニット『Aqours(アクア)』が誕生した。久保ユリカと徳井青空のデビューを含め、同プロジェクトはこの先も新たなグループやソロ歌手を輩出するシステムとして機能していくのだろうか。同氏は6月に公開された映画『ラブライブ!The School Idol Movie』にそのヒントが隠れているとする。
「映画では『μ’sというグループを高校生の3年間という期間限定のものにするからこそ、グループがなくなってもスクールアイドルというものの定義は残っていく。だから後輩たちにそれを継承していってほしい』というメッセージが発信されており、言ってみれば同アニメがこれからもこの仕組みを使いながら次のスターを生み出していく機関になっていくという意思が掲げられたように思います。この期間限定的な売り出し方は、アイドルグループ・さくら学院のような構造に似ているともいえます。また、『伝統を守り続ける』というスタンスや、コンサートの最後に全員で合唱できる曲を作って披露するというやり方、MVの構成や作り込み方はハロー! プロジェクト的だし、彼女たちの振付を担当しているのが、ももいろクローバーZなど、スターダスト系のグループを担当している石川ゆみさんだったりと、実はAKBGだけでなく優れたアイドルたちへのリスペクトを込めつつ、それぞれのシステムから良い部分を抽出している魅力的な機関として成立しているんですよね」
最後にさやわか氏は、同プロジェクトにはまた別の可能性が残されていることを示唆した。
「映画の興行収入は20億円を突破しましたし、ゲーム・アニメも快調です。ただ、ここまでライバルチームであるA-RISEにはスポットが当たっていないし、ファンアイテムもそこまで作られていないんです。ファンの目をμ'sに向けさせるための戦略であり、あくまでμ'sを好きになってもらうのが『ラブライブ!』の構造だったとするなら、これからはA-RISEをメインにしたスピンオフ企画が生まれる…ということも次の展開としては可能ですよね。ただ、制作元のサンライズは王道的な話の作り方を好む会社でもあるので、当面は主人公のグループにスポットをあてたものになりそうですが、これからも次々とソロ歌手や次のグループが音楽業界に羽ばたいていくことだけは間違いないでしょう」
巧みな構造と着実な準備期間を経て大ブレイクを遂げた同プロジェクト。今後も声優アーティストを送り出す機能をもちながら、音楽業界でまだまだ『ラブライブ!』旋風を巻き起こしそうだ。
(文=中村拓海)