東京弐拾伍時『TOKYO 25:00』インタビュー

東京弐拾伍時×DJ HAZIME座談会 DABO「時代や世代によってラップすべきことは違う」

 

――逆に、世代ということでいえば、東京弐拾伍時の皆さんが今の日本のヒップホップ・シーンを見たときに、足りないと思うものはありますか?

S-WORD: 感覚的に、10年くらい前から先に進んでいないような気はしなくもない。作品としてのクオリティは上がっているんだけど、なんだろう……みんながひとつのものに向かっている一体感が不足しているような感じもする。

MACKA-CHIN:なんだろうね、オリジナリティかな。いまだにアメリカの追っかけをしている感じはしますけどね。せっかく日本語で日本人にしかわからない言葉でやってるわけだから、そこはしっかり追求していきたいなとは思う。

DABO:マクロな視点でヒップホップ・シーンを見ていると、日本のシーンにもいろんな村があるわけじゃない。アメリカの真似をしたい子たちの村と、そうじゃないっていう子たちの村。渋谷『HARLEM』でライブする子もいれば、同じく渋谷『Family』でライブする子がいたり、池袋『bed』でライブする子もいる。男2×女1のポップなヒップホップ・グループを組む子もいれば、MCバトルのシーンでがんばってる子もいる。
「昔はさ……」って思っちゃいがちだけど、それってすごく贅沢な悩みなのかなって思うこともあるんだ。昔は村に分かれるほどの人口も存在しなかったわけだから。そういった意味では、ヒップホップ・シーン自体はすごく成熟しているんじゃないかな。

SUIKEN:真顔でカメラ目線で「世界を変える」って言っちゃえるDEV LARGEのようなカリスマがいない。カリスマっぽい人はたくさんいるけど、ヒップホップ・シーンを牽引していくアツい人が存在がいないのかな。

DABO:がむしゃらな人がいないんだよね。俺たちの先輩は革命家みたいな気持ちでヒップホップと向き合ってた人が多かったからさ。今は体温が低めというか、ちょっと内容も冷めているのかなって。別に、それはそれでクールだと思うけどね。

――ニトロは渋谷のカルチャーに根ざしたアティチュードでしたし、当時は渋谷・宇田川町をレペゼンする熱いMCがたくさんいて、ひとつの世界を形成していましたよね。今はあえて自分のテリトリーをレペゼンするMCが減ってきているのかな、と。一方では、KOHHのように地元を語り継いでいく若手もいる。こうした多様性が、ひとつの熱量を分散させているのかなと感じることもあります。もちろん、どちらがいい、悪い、という話ではないのですが。

DABO:「俺たち渋谷だぜ!」っていうラッパーは少なくなったよね。

HAZIME:宇田川町に限って言えば、不足しているのはヒップホップ・カルチャーに根ざしたお店でしょ。

SU:昔はいっぱいあったからね。

HAZIME:今だと『Manhattan Records』や『Grow Around』くらいかな。そういうお店がないと人も集まらない。サッカーでたとえるなら、“10番”的な人がいないんだろうね。たくさんのメディアに露出するZeebraをディスる人もいるけど、彼はそれを承知でメディアでヒップホップの浸透を願っている。じゃあ、「世間一般でいう日本のヒップホップ・アーティストといえば?」となったら、ZeebraやRHYMESTERになってしまうわけで、その象徴は一昔前からずっと変わっていないのも問題なんですよ。サッカーではメッシやクリスティアーノ・ロナウドが活躍しているのが普通なのに、日本のヒップホップはいまだに「ペレ! マラドーナ!」で止まっている感じかな。DJカルチャーに関してもそう。「俺は10番じゃなく、6番くらいで大丈夫っす」みたいな弱腰が増えたと思う。

――そうしたシーンの在り方も含めて、今作はどういった世代に聴いてほしい、という思いはありますか?

DABO:30歳前後の世代に聴いてほしいな。なぜなら、彼らは最後のニトロ世代だと思うから。それに音楽に対するアンテナも高かっただろうから、昔の音楽も掘り下げて聴いているだろうしね。特にヒップホップが好きな人って、雑食性の高い音楽のグルメな人たちだと思ってるから。

S-WORD:僕らの作品は「今、みんなが聴いてるから聴かなきゃ!」っていうサウンドではない。この作品にピンときた人は、なにかしら共通するものを持っている人たちだと思う。そういった人が東京弐拾伍時を広めてくれたらうれしいですね。

(取材・文=渡辺志保 (BlackRiverMobb) 写真=cherry chill will ※ライブ写真のみ)

『TOKYO 25:00』

■リリース情報
『TOKYO 25:00』
発売:7月22日
価格:2,000円(+税)

1. TOKYO 24:59
2. 東京弐拾伍時
3. OLE OLE オレ
4. TIME CHECK
5. ラン(乱)ナーズ・ハイ
6. Lucifer's Out feat. AKLO
7. 時間ヨ止マレ feat. MURO & PUSHIM

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