スチャダラ・ANIが『水戸黄門スペシャル』出演 ベテランミュージシャンのドラマ出演が続く背景とは

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月曜ゴールデン特別企画 水戸黄門スペシャルHPより

 ANI(スチャダラパー)が、6月29日からTBS系で放送される『水戸黄門スペシャル』に出演することが先日発表され、音楽ファンの間で話題を呼んでいる。

 『64(ロクヨン)』(NHK)でベテラン刑事役を演じた電気グルーヴのピエール瀧や、『BORDER』(テレビ朝日)で迫力の殺陣シーンを披露した元BLANKEY JET CITYのドラマー・中村達也など、ベテランミュージシャンが俳優として活躍する光景を目にする機会が増えている。
 
 このようなミュージシャンのドラマ出演が続いている背景とはなにか。ドラマ評論家の成馬零一氏に話を聞いた。

 「大きく2つの要因があると思います。まず、ミュージシャンは日常からステージに立ち慣れています。ミュージシャンがライブ・パフォーマンスを披露するということは、俳優が演技をするということに限りなく近い行為と言えるでしょう。5分の歌を歌うとすれば、歌詞の世界の登場人物の心情を歌うことで演じているわけです。そう考えると、ミュージシャンは基本的に俳優業との相性がいいのです。

 ミュージシャンが俳優デビューして、演技の経験が少ないままに活躍して注目を浴びるということは、テレビでも映画でもこれまでに多くあります。福山雅治や泉谷しげるなどは、ミュージシャンであり、俳優としても活躍していますよね。割とこの流れは定期的にあると思います。最近でいうと、星野源や、映画『海街diary』に出演したレキシの池田貴史もそうです。

 ジャニーズやAKB48などのアイドル勢も、演技が上手です。今のアイドルは、週に2~3回は舞台に立つというパターンが多く、ステージに立ち慣れています。『ヤメゴク』で初主演を果たした大島優子は『こんなに表現力があるのか』と驚くほどの演技でした」

 また、ピエール瀧などのベテランミュージシャンが起用される背景に関して、同氏は以下のように説明する。

 「ピエール瀧やスチャダラのANIなどのミュージシャンが重宝されるということは、彼らの年齢の問題があると思います。二人は同じ48歳ですが、その世代の中年男性に、少し個性的で、絶妙な役まわりが求められているのではないでしょうか。結局、ドラマにしても、何にしても、ジャニーズやEXILEなどの起用が多く、それ以外は“イケメン実力派俳優”と言われるような小栗旬や山田孝之などの活躍が目立ちます。

 つまり、主役の脇を固めるファイン・プレイヤー……極端なことを言えば、“理想のおっさん”というか“中年世代の絶妙なポジション”が求められているのではないでしょうか。

 俳優でいきなり40代からデビューするということは、ほとんどないと思います。現在、年配の男性を演じている大御所の方々、たとえば北大路欣也は若い頃は主演俳優として活躍していましたが、役者として年齢を重ねていくことで、現在は「大企業の社長を演じるならこの人しかいない」という、大御所の名わき役としてドラマではなくてはならない存在となっています。そんな大御所の中でも、大杉漣や遠藤憲一、田口トモロヲのような、中年世代の“いい塩梅”の俳優の存在は限られています。……田口トモロヲも、もともとはミュージシャンですが(笑)。

 そのあたりの俳優だけに絞ってキャスティングしようとすると、賄いきれないのかもしれません。では、俳優以外にどこからそうなり得る存在を調達してくるか、というと、ミュージシャンであり、それが電気グルーヴやスチャダラパーなのです。

 また、ドラマの作り手側の世代の問題もあるかと思います。ちょうど作り手側が、彼らのようなベテランアーティストを20代からずっと見ていたような世代なのでしょう。それも踏まえて、彼らのようなミュージシャンが起用されやすくなっているのもあるかもしれませんね」

 日常的にステージに立つことが、「演じる」能力や「独特な存在感」に磨きをかけているとするのであれば、ベテランミュージシャンが現在“中年世代のファイン・プレイヤー”として活躍しているように、俳優では賄いきれないポジションを今後もミュージシャンが担っていく可能性は高いのではないだろうか。

(文=久蔵千恵)

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