名ドラマー、ジェフ・ポーカロの功績(後編)「小田和正や竹内まりやとの仕事もすごい」

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村山貞雄氏。

「邦人アーティストのバックで叩いているジェフって、結構奔放に叩いているものが多い」(小原)

――最後に、ジェフ・ポーカロのドラミングに興味を持って、これから聴いていくリスナーのために、オススメの作品を教えていただけますか?

村山:入門ということでは、やはりTOTOでしょうか。本当にいっぱいあり過ぎて困りますけどね(笑)。でも、ちょっとジェフが気になるという人に、とっかかりやすい有名な曲から入ってもらおうと考えると、まずはTOTOかなと思います。アルバムも普通に手に入りますからね。

――アルバムで言うと?

村山:ファースト(『宇宙の騎士』)から4枚目(『TOTO Ⅳ〜聖なる剣』)あたりかな。一番有名なのはやはり『Ⅳ』なので、それかなあ。スター・ウォーズだって、最初はエピソード4だったので(笑)。

山村:(笑)。僕はドラムを練習する過程で、ジャズというものをもう少し学ばないと、この先自分が伸びて行かないなと感じたときに、チャーリー・パーカーの伝記を読んだんですよ。パーカーがいろいろなセッションに行って、しくじって、シンバルを倒されたり、スティックを投げられたり。そんな失敗を何回かやらかして、ついに彼はどんなスケールでも自在に吹けるようになっていくとか、そういうことを読みながら、“一人の人間が、こういう思いの中で演奏したものを、やっぱり聴いてみたい!”と思ったんですね。それまでは、音質的な古さとか、そういう小さなことだけで入り込めない感じがあったんですけど、そこが全部ひっくり返ったんです。そして一気にジャズが面白くなった。だから、こじつけじゃないんですけど、この本を読んで、ペラペラ〜とページをめくりながら、“おっ! 何これ、そういうことなの!?”と思った作品から聴いてもらいたいな、と思います。小原さんが書かれた“ここはジェフのフレーズがすごくキマっている”とか、僕の書いたところで“ここではこういうことをやっている”みたいなものを読んで、“ふ〜ん”と感じたら、それを聴いてもらいたいと思います。インスピレーションを感じたり、聴きたいという気持ちが湧いて、自分から探しにいくみたいな行為がそこにあれば、すごく楽しいんじゃないかと思うんですよね。あとは、年代順に聴くのもオススメですね。個人的には。

小原:僕は多少へそ曲がり的なことを言うとですね。この本の中で何枚か言及していますけど、ジェフはJ-POP系のアーティストとも結構共演をしているんですよ。たいていがウェスト・コーストに行って、向こうで録音しているんで、やっぱり西海岸独特の空気やノリなんかが欲しかったんだと思うんですけどね。そういう邦人アーティストのバックで叩いているジェフって、結構奔放に叩いているものが多いんです。僕が今回すごいと思ったのが小田和正の『K.Oda』で、あれはちょっとびっくりしましたね。短い期間なんだろうけど、ジェフと小田和正との間に信頼関係が築けたんじゃないかなと、そういうふうに感じられる演奏なんです。あと実は、僕がジェフ・ポーカロのことを初めて意識したのは、竹内まりやの『Miss M』っていうアルバムなんです。邦人アーティストだと、日本語だから取っつきやすいというのもあるし、いろいろなアーティストとやっているので、選ぶこともできると思います。聴いてもらえると、意外と“おっ!”と感じるものがあると思いますよ。

(取材・文・撮影=大久保徹)

■リリース情報
『ジェフ・ポーカロの(ほぼ)全仕事 レビュー&奏法解説でグルーヴの秘密を探る』(DU BOOKS)
著者:小原由夫
価格:3,024円(税込)

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