『アンサンブルー』リリースインタビュー
徳永憲が語る、クールな音楽の作り方「作った瞬間の盛り上がった気持ちはすぐ忘れたい」
徳永憲は他ではないような独創的な曲を作るシンガー・ソングライターだ。変則チューニング、ひねくれたコード進行、ひねくれたユーモアとシニカルでアイロニカルな視線に満ちた、どこかシュールな感覚もある奇妙な歌詞。か細いが強いものを秘めた声。シンプルなギター弾き語りから、ホーンやストリングスを導入した凝ったアレンジの曲まで自在にこなす音楽性も高い。デビューして17年。もうベテランといっていいキャリアなのに、いつまでも若々しく瑞々しいイメージがある。
前作『ねじまき』は震災後の心情を歌い込んだ比較的シリアスな作品だったが、2年ぶりの新作『アンサンブルー』は、本来の彼らしいひねくれたユーモアと、「終わり」と「再生」をポップな感覚で綴った歌詞が印象的な作品に仕上がっている。必聴の作品だ。
ーー前作は比較的シリアスなムードのアルバムでしたが、今回は徳永さんらしいちょっと不思議なイメージと、シニカルでアイロニカルなユーモアが感じられますね。
徳永:そうですね。ボチボチ曲を書きはじめて…4〜5曲ぐらいできると、なんとなくアルバムのトーンが見えてくる。それ合わせて、昔書いてストックしてる曲で使えそうなものを組み合わせて構想を練っていくんですが、今回でいうと「イカロスの気絶」だったり「ザ・解体ショー」「アンサンブルー」といった奇妙な曲が最初にできてきたんです。「アンサンブルー」って、ちょっと不思議な曲ができた時に、もやっとですけど、アルバム全体のイメージが見えてきましたね。シュールなものを除外しないというか。そういうものをわかりやすくするんじゃなく、出てきたままにやってみようと。
ーーわかりやすくするためのサービス、補助線はなし。
徳永:ないですね。歌詞はわかりにくいところもあると思います。あまり聞き手を突き放すのもどうかと思うんですが、でも今回はそういうことは考えてない曲が多いですね。なので歌詞に一癖二癖ある曲が多い。でもそれが僕らしい個性なのかなと。
ーー「(そういや僕らは)アンドロイド」とか「理想のオートバイ」とか。確かに一癖のある曲ですね。
徳永:そこらへんは昔からあった曲ですね。今回は変…というか、おかしな曲が多かったので、合うかなあと思って引っ張り出してきたんです。「アンドロイド」とか、絶対前作には入らなさそうな感じなんです、自分の中では。そういうのには入らずに残っていたおかしな曲が今回はうまい具合にはまった。
ーー前作は震災以降の心情が投影された作品でしたからね。曲調もシンプルだったし。
徳永:はい。今回は前作のようなものを作って一旦平たくなったところで、何も考えずに作り出してみたんですね。そうしたらなんとなくこう…初期の、デビューしたころのような辛辣な感じとか、ひねくれた感じのものが出てきて。たぶん本質的にはそういう人間なんだろうなあと。なのでそういうところにもう一度立ち返ってみようかと思ったんです。