ONE DIRECTION、スタジアム熱狂の理由とは? 来日公演でわかったオーソドックスな音楽的魅力

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Photo by Kazuki Watanabe

 観ていて感じたのは、サウンドの意外な骨太さ。欧米のボーイズバンドというと、どうしてもBackstreet Boysや'N Syncのような甘めのダンス・ポップを想像してしまうけど、1Dはどちらかと言うと、カラッとしたアメリカンロックやハードロックの色が濃い。具体例を挙げるならば、カナダが生んだ永遠の18歳Bryan Adamsのような雰囲気。実際、アンコール1曲目に披露された「You & I」は、彼のヒット曲「Heaven」に通ずるものがある。あの頃のロックを通っていない友人は曲に面白みを感じないと言っていたが、サウンドに余計な装飾がないだけにその気持ちは分かる。しかし、こういう聴き方が正しいのかは分からないが、自分は完全に懐メロを聴くような感覚で楽しんでいた。「Where Do Broken Hearts Go」のようなストレートなロックチューンは特にツボだし、Def Leppard「Pour Some Sugar On Me」を思わせる「Midnight Memories」もいい。どの曲も良い意味で作りがオーソドックスで分かりやすい。恐らく、欧米での人気は若い世代だけに留まってはいないだろう。随所で聴かせるハーモニーの美しさもあり、楽曲の魅力はより際立っていた。ルックスの良さばかりが取り沙汰されているイメージが強いが、1Dの核となるのは楽曲だ。

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Photo by Kazuki Watanabe

 一方、演出は想像とは異なり極めてシンプルなものだった。オープニング辺りで銀テープが舞ったものの、それ以降に派手な演出効果は一切なし。その代わり、LEDに映し出されたファンが掲げるメッセージボードにコメントをしたり、MCでファンとの交流をはかっていた。基本的にステージ運びはスムーズで、改めてセットリストを見て曲数の多さに驚いたほど。だれる場面はないし、熱心にメンバーの名前を叫ぶ観客の熱も一切冷めることがない。

 ステージ上の5人はごくごく自然体だ。メンバー同士、オフマイクで何やら話していたり、立ち位置もわりとバラバラだったり。何よりメンバーの衣装よ。計1万円以内で揃えられそうなシンプルな上下で、5人中3人が真っ白なTシャツ的なものを着用。これを我々のような凡人が真似をすると痛い目に遭うのだが、彼らにはよく似合っている。「チョウカワイー!」とか「ニッポンダイスキ!」というMCも全く嫌味がない。男として嫌いようがなくて悔しい。終始ギターをプレイしていたナイルの役割は、初見ではあまりよく分からなかったが、「ウォーキング・デッド」のダリル役でお馴染み、ノーマン・リーダス似のルイは、ダリル同様にちょっと寡黙な感じがして、男心をくすぐる。盛り上げ役と思しきハリーの日本語MCは、ただ言葉をなぞってるだけでなく、しっかり気持ちが乗っていた。これは嬉しい。後日、彼らの熱狂的なファンに話を聞いたところ、5人は世界中のファンとの交流をとても大事にしているそうで、会えばきさくに写真撮影などに応じてくれ、常にファンのことを気にかけてくれているという。ルックスが良くて、曲も良くて、歌も上手で、等身大で、ファン思い。なるほど、熱心なファンが多いのも頷ける。

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Photo by Yoshika Horita

 アンコール最後の「Best Song Ever」もキャッチーで耳に残る良曲だった。1Dの楽曲の魅力がちゃんと語られているのを見たことがなかったので、この日耳にした楽曲の数々は嬉しい発見である。

 前述の通り、この日はスタジアムモードだっただけに、アリーナ最後方ではかなり音がぼやけていて、存分に堪能できなかったのが少し残念だった。次はもっと良い環境で再会したい。

■阿刀 "DA" 大志
75年生まれ。PIZZA OF DEATHにて宣伝制作を10年以上務めた後、12年からフリーランスに。現在は執筆業を中心に、プロモーター、音楽専門学校講師など、音楽に関わるあらゆる分野で雑食的に活動中。

■作品情報
『FOUR: THE ULTIMATE EDITION|フォー: アルティメット・エディション』
完全生産限定盤
発売中
価格:2400円+税
日本のファン・ページ含む豪華ブックレット付

『FOUR|フォー』
発売:2014年11月19日
通常盤
価格:2,200+税

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