嵐・大野智はどんな音楽的挑戦をしてきた? 歌唱力を活かしたソロ曲を振り返る

 『Beautiful World』(2011年7月)収録の「Hung up on」では、変わらず大人っぽいトラックを使用しているのだが、ボイスパーカッションが加えられるなど、ブラックミュージックの色も濃くなり、スペイシーさとファンクネスを同時に感じさせる一曲に仕上がっている。大野のボーカルもよりテクニカルになり、カラオケでみんなが歌う曲ではなく、完全に“聴かせる曲”を目指したことが伺える。『Popcorn』(2012年10月)の「two」もまた、歌いこなすには難しい楽曲だ。サビこそポップなもののリズムパターンは複雑で、それに合わせた平歌では大野のリズム感の良さを感じられる。

 ソロ曲の中で明らかな新機軸と感じられるのは『LOVE』(2013年10月)に収録された「Hit the floor」だろう。80年代のシンセ・ポップを思わせるどこか懐かしいサウンドながら、ボコーダーを導入し、新鮮さも感じさせているのが印象的だ。大野のボーカルも原点回帰するようにソウルフルな歌い回しとなっていて、30代となった彼の魅力を存分に引き出している。

 そして最新作『THE DIGITALIAN』(2014年10月)に収録された「Imaging Crazy」は、さらに凝ったブレイクビーツに乗せた複雑な譜割りの楽曲だ。今後の大野ソロ曲はよりアート性、音楽性を高めていくのではないか。そう感じたリスナーも少なくないはずだ。

 こうして大野のアルバム収録のソロ曲を通して聴くと、優れたリズム感や歌唱力が要求される難易度の高い楽曲に次々挑戦していることがわかる。ポップで耳馴染みの良いシングル曲で聞く大野の歌も魅力的だが、ソロ曲ではさらに尖った大野の歌が楽しめるので、ぜひ一度通して聴いてみてほしい。

(文=松下博夫)

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