AKB48、4枚目のオリジナルアルバムに見る新鋭・中堅・ベテランの“現在地”

 また、それにも増して『ここがロドスだ、ここで跳べ!』で実感するのは、近年のAKB48を支えてきた中核メンバーの充実度だ。このアルバムには高橋、渡辺や柏木由紀の他、松井珠理奈、山本彩、指原莉乃といった姉妹グループの代表格のソロ楽曲の収録も多い。山本の歌唱の強さや、渡辺らがそれぞれに描く世界の豊かさ、長らく48グループを支えながらも技量的にも年齢的にもまだ上のレベルを期待できる松井のポテンシャルを見るにつけ、宮脇らに象徴される次世代による世代交代などまだそう簡単なものではないと思わせる。今作に厚みが感じられるのは、彼女たち現在の中心メンバーが円熟しつつあるからでもある。

 そうしたメンバーの中で、ここでは小嶋陽菜に着目しておきたい。ソロ楽曲の「7回目の「レミゼ」」(Type-A盤のみに収録)、センター曲「ハート・エレキ」、またAKB48プロジェクトのアシスタントプロデューサー北川謙二とのデュエット曲「2人はデキテル」まで、今作には小嶋のパフォーマーとしての懐の深さが実感できるポイントが複数ある。39thシングル『Green Flash』(3月4日発売)に柏木とともにセンター起用される小嶋には中心人物としての正統な説得力も備わっているが、同時に「2人はデキテル」のような企画色の強い楽曲が浮いてしまわないようアルバムの一面としてつなぎ止める稀有なキャラクターも持ち合わせている。スタッフを含めて内輪的に企画を展開させることは総合プロデューサーの秋元康の代表的な資質のひとつだが、その企画をAKB48のメンバーとして嫌味なく体現できるバランスが、小嶋を他にない特別な存在にしている。今作を通じて小嶋陽菜という人のタレント性が持つ頼もしさを堪能すると同時に、近い将来にやってくる小嶋の卒業以降、彼女のような幅の広さを持ったメンバーをいかに育てられるかというグループの課題も見えてくる。次世代への橋渡しに強い期待を抱かせる今アルバムだが、小嶋という高い壁はどこまでも揺るがない。それもまた、今の48グループをあらわす今作の面白さだ。

 もちろん、『ここがロドスだ、ここで跳べ!』には大島優子卒業に際しての「前しか向かねえ」や、他の初期メンバーも顔を揃えた「今日までのメロディー」が収められているため、大島卒業という一大イベントのあった年として2014年を思い返すこともできるアルバムである。その意味ではAKB48を作ってきた過去の代表的メンバー、現在のAKB48を支えるメンバー、そして次代を担うメンバーのそれぞれの姿が一枚に凝縮されたものともいえる。ただし何より、グループのキャリアを振り返ることではなく、「希望的リフレイン」を旗印にした進行形の物語を歩むためのアルバムであることは間違いない。高橋を継ぐリーダーの継承、中核メンバーの将来像、そして新たにNGT48構想が本格化する今年以降の48グループは、組織全体の形をさらに変化させていく。その動きを観察するための下準備としてまずは、見どころの多い今回のアルバムで現在地を確認しておくのもよいだろう。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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