tha BOSS×般若が語る、日本のヒップホップの臨界点「ラッパーの表現の質はどんどん上がっていく」

般若「ステージに立ってる時は、お客さんの顔が凄いゆっくり見える」

――般若さんの野音のライブも、まさに理屈じゃないところで何かが突き動かされていくようなエネルギーがありましたよね。般若さんはライブをしている時、オーディエンスとその場を共有している感覚はあるんですか?

般若:そうですね。こっちから発信してきたものが、もうみんなの曲になっちゃったんだなぁとか、そういうふうに思うことはあります。でも、ライブをやっている時はこっちもそんなに余裕もないので……余裕なくないですか?

tha BOSS:ないね。戻れないし、進めていくしかないからね(笑)。乗り遅れてるヤツなんて構ってない(笑)。作品は別にみんな好きに聴いてもらえればいいよって感じだけど、ライブに関してはこっちがラップしてる最中は“つまらないんだったら、帰れば”って感じで。共感してくれてるヤツらしか相手にしない。ただそれだけ。それくらいの絶対的な肯定を求めるね。

般若:そうやって俺はここ3年、いろんなことを我慢してるんで(笑)。

tha BOSS:でも、申し訳ないけど本当にそうだわ。結果や批判は甘んじて受ける。それはしょうがない。俺だっていろんな曲を聴いて良い悪いは言うし、それこそ昔が良かったとかも言う。ただ、ライブのまさにラップしてるその瞬間に関しては“悪りぃけど”って感じだよね。それ込みの入場料金だからって。

般若:間違いないっす。別にライブ中に微動だにせずスマホ片手に見てるのもいいんですよ。逆にそれでメシ食えんじゃねぇかみたいなヤツもいるわけです(笑)。葬式みたいに突っ立ったまま。まあ、いろいろ変わったのはしょうがないですけど、でももったいないぞってところはあります。スマホで動画を録るのはいいけど、お前が見てるのはスマホだぞっていう。あんなの女を目の前にしてエロ動画見てるのと一緒ですわ。マジでそう思いますよ。そういえば俺、ライブで目の前で化粧直された時、勃起しそうになりましたからね。昔の話ですけど。

tha BOSS:俺も目の前で化粧直されたことあるわ。

般若:最高!

tha BOSS:こいつなんの準備してるんだよって。

般若:最高でした。

tha BOSS:バンドだと、ここからはギターソロとか、ここからはコーラスみたいな感じで、自分を保てる隙間があるかもしれないけど、ラップの場合はずっとラップしてるからさ。目の前で化粧してる女がいる時も。

般若:客席でちょっと揉めてるヤツが見えたり、こっちは全部見えてるからってことです。

tha BOSS:お客さんは見てるつもりでいるけど、実は見られてるのはお客さんなんだよね。みんな丸見えなんだよ。

――演者は一番よく客席が見えるところにいますからね。

般若:なんかうまく説明できないけど、ステージに立ってる時は時間軸がヘンに細分化されてるというか、お客さんの顔は凄いゆっくり見えるけど、自分の中では言葉がスピードに乗って回転していく。それと同時に今見えてるものに対しての意識が働いていたりしてるし、とにかく忙しいんですよね。

――そういう意味で野音はどうでしたか?

般若:野外でちゃんとやるのも初めてだったんで、良いことと悪いこととはありましたね。照明とかも含めて箱の中だったら支配して作れるけど、野外は日が暮れてくるとともに進んでいくようなストーリーがあったりとか。お客さんも俺も時間とともに変わって、“あれ? みんな同一人物だったのかな”っていうテンションになっていく。そこは面白いと思うんですけどね。またやりたいです、あそこは。できるだけコンスタントにやりたいなと個人的には思ってます。俺のソロじゃなくてもウチの昭和レコードとかでもやりたいなと。今年は忙しかったですからね。1月に自分のワンマンをSHIBUYA-AXでやって、9月に野音をやって、10月はZONEのライブがあって、11月はSHINGO君(SHINGO★西成)のなんばグランド花月のワンマンがあって。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる