中島みゆき、ユーミン、ドリカム……NHK朝ドラ主題歌の歴史とその特徴とは?
ドラマの主題歌を人気アーティストが手がけるタイアップは、今や当然のこととなっているが、かつて、それこそ朝ドラ開始当時(1960年代)はまだまだテーマ曲がその役割を担っていた。いわば歌なしのメロディのみの曲で、近年だと『あまちゃん』がまさにこのパターンの作品である。初めて主題歌が登場したのは1966年。『おはなはん』で倍賞千恵子が歌った『おはなはんのうた』だった。これが作品とともに、楽曲もヒット。以降、70年代にはたびたび主題歌を持つ作品が登場したものの、80年代にはまたほとんどテーマ曲パターンに戻ってしまっている。主演のアイドルがドラマの主題歌を歌ったりと、民放の番組ではすでにタイアップが一般化していたころだから、NHK朝ドラ独自の方針だったのだろう。『おしん』など重めのテーマの作品が多かったのも影響しているのかもしれない。
90年代に入ると、まず『ひらり』(1992)の主題歌にドリームズ・カム・トゥルーが『晴れたらいいね』を提供。続いて井上陽水、山下達郎ら大御所を起用し、いよいよ主題歌パターンが本格化する。特に94年~95年の異例の1年クールで放送された『春よ、来い』で、松任谷由実が歌った同名曲はミリオンセラーを記録。大きな効果を上げた。2000年代からは、MISIAや福山雅治、アンジェラ・アキ、aiko、ゆずといったJ-POP勢も登場するようになり、現在にいたっている。
普通のドラマ主題歌と朝ドラ主題歌の一番の違いは、週のうち6日毎日流れること。さらに昼帯やBSでの再放送、日曜の一挙放送を含めるとかなりの回数オンエアされることとなる。ラジオやCMとは比べ物にならないほど、何度も耳に入るチャンスがあるというわけだ。正直、これほどお得かつ効果の期待できるタイアップはほかには見当たらない。もちろんNHKという放送局の立ち位置ゆえに、アーティストの選択にもそれなりの気配りはあるだろう。しかし一方で、『あまちゃん』では『潮騒のメモリー』や『暦の上ではディセンバー』といったある意味イロモノ楽曲をも世間に浸透させた実績がある。今回の中島みゆきも、朝ドラのイメージを鑑みれば十分に変化球。今後はどんなアーティストに白羽の矢が当たるのか、引き続き注目していきたい。
(文=板橋不死子)