tofubeatsがメジャーで挑戦しようとすること「パーソナルな部分を突き詰めた先に全体がある」

「人が増えれば増えるほど、“tofubeats”を制御するのが難しくなってくる」

――アルバム最後のトラックである「20140803」は、Sonud Cloudに上がっていたデモバージョンに歌詞を加え、フェードアウトする形になっています。

tofubeats:この曲は、アルバムが制作終盤でどうしようもないけど「とりあえずサンプリングで曲作るか」って息抜きにデモを作ったら上手くいったもので…その後、打ち込みし直して収録しました。あとは、『lost decade』の最後に入っている「LOST DECADE Feat. 南波志帆」みたいな、嬉しい曲に悲しいことを合わせることが美しいと思っていて。あの曲は杏里さんの「愛は誰のものでもなく」っていうシャッフルビートの失恋ソングが元ネタなんですけど、曲調は悲しく聴こえなくて、リプライズ、カーテンコール的な作りが好きで。「衣替え feat. BONNIE PINK」でアルバムを終わるなんてことは絶対したくなかったし、「ありがとうございましたー!」ってみんなで言う時間が欲しくて、アウトロは徐々にフェードアウトしていく形になった。

――最後のワンフレーズである「君が好きな音楽で/てゆか毎日 音楽で」は、雑誌『WIRED』のコラムにある「日々を良くするために音楽をやろう」と連動しているように感じさせられました。

tofubeats:実は、それに加えてアルバムの最後には、僕が書いた手書き風のメッセージが入っているんです。そのメッセージは「we have to make it better day by day looks make music」っていう一文で締めていて、「20140803」や『WIRED』の原稿と関連付けるようにしてあるんです。

――さらに奥があったんですね。

tofubeats:そう。だからCDを買って、ブックレットを読んで、最後の1ページを見ると、そこを補完できるんです。

――フィジカルで最後を補完できるというのは、面白いですね。

tofubeats:この文章が先にある形で、『WIRED』の原稿があって…我ながらキレイだなーって思いますね(笑)。でもCDにブックレットを入れるというのは、宇多田ヒカルさんの『First Love』のオマージュなんです。このアルバムの『パーソナルな部分を突き詰めたものが日本で一番売れた』というのは、自分がパーソナルなことを目指してやるうえで、ずっと希望になっている。“みんなに向けて曲を書かなくていいんだ”っていう回答に思えて。一点に向かっていった先には全体があるというか、精神は細部に宿るという感じですかね。

――宇多田さん以外にもいくつか影響を受けたアーティストを挙げるとすれば誰なんでしょうか。

tofubeats:他には、杏里さんとか、角松敏生さんとか…。でも、ブックオフで売ってるアルバムで一番オススメを教えてと言われたら宇多田ヒカルさんの『First Love』か中澤真由さんの『STEP INTO MY HEART』を選びますね。中澤さんのこの作品は本当に名盤だと思っていて、良い意味でうだつの上がらないポップス~R&Bの、決して100点満点のアルバムだとは思わないんですけど、逆に隙があるところ含めて100点なんですよね。ただ、これを各所でオススメするもんだから、amazonでの価格が徐々に上がってて(笑)。

――ほかにも、『WIRED』の記事には、メジャーアーティスト故のメリットとデメリットも書いてありました。

tofubeats:得しているなって思うのは、今、まさにプロモーション段階ですね。自分で金銭的なリスクを背負わないし、在庫を抱えなくていい。あとはフルストリーミング試聴だったり、ゲストボーカルの提案や実現に向けての動きなどを見てると、メジャーなのに自由にやらせてもらってるなって思います。それに対して、損という部分では、人が増えれば増えるほど、作品…つまり“tofubeats”を制御するのが難しくなってくる。でも、一番はタイムラグに尽きると思います。慌ただしくしていると「すぐリリースされた」って思うんですけど、「20140809 with lyrical school」や「20140803」みたいに、日付を曲名に入れとくのってそういう理由があって。8月に作った曲が10月に出るって、メジャーのなかでは詰めて頂いている方なんですけど、それでもやっぱりなんかちょっと遠いと思うこともあったりしますね。

――Sound Cloudにアップして、リスナーの反応を見ながら洗練させていけるインディーズ時代と比べてしまうんですね。

tofubeats:まあ、その期間がないとMVが撮影できないというのもわかっていますし、大きいコラボとかプロジェクトを動かせるのに対し、個人として動ける範囲が以前より限られてくるのもきちんと理解しています。以前がCDを作って納品するところまでやっていたので、操作し過ぎてただけなのかもしれないですが(笑)。

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