柴 那典のチャート一刀両断!
EXILE、増員戦略でセールス倍増 総帥HIROの次なる一手とは?
こちらのメンバーはボーカル7名&パフォーマー19名で総勢26名。総勢26名である。
この「EXILE一族」という言葉は、EXILEが所属しHIROが社長を務めるプロダクションLDHの公式ホームページにも現れている。たとえばGENERATIONSのアーティスト説明にはこうある。
若者たちは、EXILE一族の座をつかみ取れるのか。
「夢者修行」は成長の場であり、過酷なサバイバルの場。
「夢者修行」は、夢をめざす若者たちが、実力、精神力、人間力を鍛え上げると同時に、EXILEの誇りと志が注入される場であり、ただアーティストとしてのデビューをめざすのではなく、EXILE TRIBE = EXILE一族となるために、全力をかけて修行する場でもあります。(抜粋)
27名からなる妹分の女性グループ、E-Girls、今夏始動する16名の新グループTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEも「EXILE一族」の一員だ。さらにLDHはダンス&ボーカルスクールEXPGを東京、大阪、沖縄など全国9箇所、そして台北もあわせた全10箇所で運営している。この先EXILE一族が数百人規模でさらなる増殖を果たしていくのは間違いないはずだ。
さて。今週のシングルランキングに戻って、もう一つ注目したい曲が、今週5位のSMAP「Top Of The World/Amazing Discovery」。初週12.3万枚を売り上げ、先週7月28日付けでのランキング1位となったシングルだ。実はこの2つシングルを比較することで、EXILEとSMAPの楽曲戦略の違いを読み解くこともできる。
ここまで書いた通り、新生EXILEはメンバー増殖でテコ入れを果たし、単なるグループから「族」への拡大を図ってきた。しかしその一方で、楽曲自体はかなり手堅い保守的な仕上がりになっている。作曲はスウェーデンの音楽プロデューサー、エリック・リボム。これまでも嵐や東方神起など数々の楽曲を手掛け、過去5年間に関わった楽曲はトータル2,000万枚のセールスを誇るというヒットメイカーだ。EDMをベースにしながらも、清涼感あるメロディと高揚感をあおるリズムは、いわばソツのない作風となっている。
一方、グループの存在自体は王道を貫いているSMAPは、楽曲のプロダクションで革新性を強く打ち出してきている。「Amazing Discovery」は中田ヤスタカ作曲で、「Top Of The World」はMIYAVIが作曲、CMJKが編曲。どちらもEDMをベースにしているのが、特に斬新なのが「Top Of The World」だ。よく聴くと全編4分の7拍子の曲になっている。「♪ウォーウォーウォー」と歌っているサビの部分も実は変拍子だという、ポップスにはかなり珍しい仕掛けが込められた曲なのだ。
赤い公園の津野米咲が手掛けた「JOY!!」など気鋭のミュージシャンを起用する音楽性に定評のあるSMAPだが、またしても攻めの姿勢を見せたわけである。5人が総合司会をつとめた「27時間テレビ」では、9月から100万人動員の全国ドームツアーを行い、21枚目のオリジナルアルバム『Mr.S』をリリースすることも発表した。
メンバーの増殖で革新を打ち出すEXILEに、5人であることを守りつつ音楽性に挑戦を見せるSMAP。チャートを席巻する二大国民的グループは、そんな風に好対照な存在となっている。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter