橋本徹が語る『Free Soul』の現在地、そして2010年代のアーバン・メロウ

――最後に『Free Soul. the classic of Terry Callier』ですが、このタイミングでテリー・キャリアーを選んだことに特別な理由があるのでしょうか?

橋本:実はテリー・キャリアーのフリー・ソウル作品は昔から作りたかったんです。でも、当時はレーベルの枠を超えて曲を収録することが難しかったり、なかなか良い機会に恵まれなかった。本当はもっと早くリリースしたかったんですが発売にはいたらず、仮に2000年代にリリースできていたとしても、タイミングは逃してしまっている感が出てしまっていたと思うんです。だからレコード会社から20周年企画を求められたときに、“今でしょ”と思って(笑)。

 『Free Soul』を象徴する存在、『Free Soul』そのものを始める大きな動機のひとつになった、テリー・キャリアーの『Ordinary Joe』(1972年)との出会いもありますし、今回こうして決定版としてリリースできたのは非常にうれしいですね。

――改めて、橋本さんにとって『Free Soul』とはどんなものでしょうか?

橋本:20周年を迎え、自分の中で認識がちょっと変わってきたかもしれないです。今まではどこかに少しだけ、若かりし日の青春の輝き的なニュアンスがあったんですが、だんだんと再びリアルなものとして意識するようになってきました。当時イベントに来てくれていた人、CDを買ってくれていた人……そういう人たちが活躍する時代になってきていて、一緒に何かをやること、分かち合うことができる。例えば、Nujabesはその先駆けだったと思います。そういったことはすごくうれしく感じるので、これからもネクスト・ジェネレーションにきちんと届ける努力をしたいという意識はすごく強まっています。

 今回のリリース・ラッシュは、フリー・ソウルをリアルタイムで体験した人にももちろん大人買いしていただきたいんですが(笑)、音楽を深く掘り下げる作業から遠ざかってしまっている若い人たちにも、ぜひ聴いてほしいです。今年20周年でそれを怠ってしまうと、30周年、40周年と、次の世代と続けることができなくなってしまうので(笑)。一時の浮き沈みに左右されずに、これからもしっかりと継続していきたいと思っています。

(取材・文=橋本 修)

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