“答え”よりも“謎”のある作品をーー銀杏BOYZ峯田と豊田道倫が見据える「2040年の音楽」

峯田「計画停電のときの東京は、2040年の東京を見ている気がした」

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対談は終始、旧交を温めるような和やかな雰囲気で行われた。

峯田:俺、大阪にツアーとかで行くと、必ずレコード屋さん行くんですけど、店の隅っこでコソコソ探すの好きで。山形にもあんなレコード屋があったら良かったですねぇ。当時、仙台がそういう意味では一番近くて、週末は友達とふたりで電車で40分くらいかけて行って、そこでライブ観たりとか、DISK NOTEっていうレコード屋さんに行ってました。あとHMVがすごく大っきくて、スウェディッシュポップのコーナーとかあって……すごい思い出すなぁ。高校二年の時にはインディーズのコーナーとかもできて、ハイスタとか、フラメンコ・ア・ゴーゴーとか、あの辺がバーっとあって。ああ、日本にもすげぇのがいるなーって、一個一個試聴して買ってたなぁ……。

ーー最近はなにかインパクトのある出来事、作品はありましたか。

峯田:本格的にアルバムのレコーディングの追い込み作業だったのが、2011年の震災の頃で。計画停電で東京がある一定期間真っ暗になって、コンビニとかも光量が落ちて、「え~、すごいなこの東京」とか思って。あの光景がずっと残っているんですよね。ひっそりとしていて一見異様なんだけど、なんか歩いている人が生き生きしていて。すごい不思議なポップ感だったんです。あれは俺が高校の時に感じた渋谷のポップ感とも違う種類なんですけど、なんかあれ見たときに「ぽあだむ」っていう曲を作ってて、すごいその街の雰囲気があてになりました。奥の方に薄いノイズとか貼ってあるんだけど、なんかキラキラっとしている曲も書きたくなったんです。あれをアルバムの最後の方に入れようと思っていて。その次のアルバムとか、銀杏の新作につながるような終わり方にしたくて。

 計画停電のときの東京は、震災っていう悲劇があって不謹慎だけど、でもなんか変に高揚したんですよね。あれはなんか、2040年とか2050年くらいの東京を見ているような気がして、すごい残っています。現実でそういうのを体験できると、あてになるんです。この曲のイメージ、あのイメージをもっといっぱい曲にしたいなとか。それが俺以外の人間にも、あの夜を特別なものだと思えているひとがいて。あの高揚した感じっていうのが、音楽によってフラッシュバックできるのかなーとか。

豊田:今回の銀杏のレコード聴くひとたちはまぁ、コアファンもいれば、若い連中もいっぱいいて。連中があのサウンドを聴いてどう変わっていくのかは気になるよね。あれ? ちゃんとした歌を歌っているひとがなぜこんな音なんだろうっていう。そこに謎っていうか、ヒントみたいなものがあって。今、そういう作品ってあんまりなくてね、答えがここでしょっていうのが多い。そういう作品は買う方も安心だけど、最終的には残らないかもしれない。

峯田:9年前に出したアルバムは、高校生とか大学生が学園祭でコピーできるような演奏だったんです。でも今回はなかなかできないと思う。でも、いろいろとつまみとか弄って、全然違った解釈でいいので「やろうと思って出来なかった感じ」でやってほしいんですよね。今、音楽好きな高校生とか、周りのクラスメイトがアニソンばっか聴いてるのに、それでもバンドやろうと思っている連中に、そういうものを残したかった。「まったく違うものになっちゃった、だけど銀杏やってんですよ!」っていうコピーバンド。そういうバンドが出てくるのがすごい楽しみですね。

(取材=神谷弘一/構成=松田広宣/写真=金子山)

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