小野島大の「この洋楽を聴け!」第9回:ローリング・ストーンズ

祝日本公演! 小野島大が選ぶ、ローリング・ストーンズのジャンル別ベスト55曲

アフロ/ファンクの5曲

Hot Stuff (1976)

 歯切れのいいギター・リフのカッティングだけで成立しているような、とんでもなくストイックでとんでもなくかっこいい、ストーンズ流ファンクの最高峰です。

Undercover Of The Night (1983)

 ストーンズ史上もっともラジカルな音楽実験の聴けるアルバム『アンダーカヴァー』の代表曲。ストーンズ流ヒップホップ〜ダブ〜ファンク〜カットアップ・コラージュがぶっ飛んでます。同時期のニュー・ウエイヴ、特にトーキング・ヘッズ『リメイン・イン・ライト』あたりが念頭にあったのかも。一定不変のロックンロール・バンドのイメージが強いストーンズですが、実は流行(特に新しい黒人音楽の動向)にも敏感であることを示した怪作。

Too Much Blood (1983)

 佐川一政パリ人肉事件をテーマにしたスキャンダラスな歌詞や血みどろのPVもさることながら、同年に出たナイジェリアのキング・サニー・アデの大傑作『シンクロ・システム』を彷彿とさせるハイパーなアフロ・ファンク・ビートが、今聞くととんでもなくかっこいいですね。アーサー・ベイカーによる12インチ・ヴァージョンも秀逸です。

Sympathy For The Devil (1968)

 邦題は「悪魔を憐れむ歌」。この曲をストーンズの最高傑作にあげる人も多いのではないでしょうか。黙示録的な歌詞、今の耳にもまったく古びていないグルーヴ感あふれるアフロ・ファンク・ビート、呪術的なコーラス、切り裂くようなハードなギター、そして悪魔的なカリスマを誇示するミック・ジャガーと、なにもかもが完璧です。

Dance Pt.1 & 2(1980)

 アフロ・カリビアン・ファンクといった感じのルーズでファンキーなノリが最高にグルーヴィなダンス・チューンです。

サイケ/ダブの5曲

Emotional Rescue (1980)

 ストーンズ流ダブ〜ダンス〜R&Bですが、ミクスチュアのセンス次第でこんなに奇妙なものができあがるという好例。全編気色の悪いファルセットで押し通すミック・ジャガーがすごい。

She's A Rainbow (1967)

 サイケ時代の最高傑作。スインギン・ロンドン華やかなりし時代を彷彿とさせるキュートでポップな大名曲です。

We Love You (1967)

 ヒッピー〜フラワー・パワー時代のエネルギーを感じるサイケ曲。ドラッグ問題での法廷闘争のさなかに出された曲で、看守の靴音や牢獄の鉄扉が閉まる音などが効果音として使われています。ビートルズ「愛こそはすべて」にジャガー/リチャードが参加したお返しに、レノン/マッカートニーがコーラスで客演。

I Just Want To See His Face (1972)

 実に怪しげで呪術的なムードをもったアフロ・サイケデリア。ドラッグ漬けだったというレコーディング時のムードが反映されているような奇妙な曲です。

Dandelion (1967)

 ハープシコードやオーボエを使って中世ヨーロッパ的ムードを醸しながら、コーラスやミックスなどでサイケ・ムードを演出。この時代のストーンズにしか出せない愛すべき一曲。

バラードの5曲

Heart Of Stone (1964)

 ストーンズ流R&Bバラードの大傑作。これが結成して2年足らず、カヴァー中心でオリジナル曲など数えるほどしかなかった時代に作られたとは信じられない名曲だと思います。

Memory Motel (1976)

 ロン・ウッド加入後初のアルバム『ブラック&ブルー』を代表する名曲。シャラララ〜というヨレヨレのコーラスが実になんともストーンズで、泣けてきます。

Ruby Tuesday (1967)

 サイケ期のストーンズには名曲多し。現代のチェンバー・ポップにも通じるレトロ・サイケなアレンジとメランコリックなメロディが最高にマッチした美しい曲です。

Time Waits For No One (1975)

 中盤のミック・テイラーのサンタナばりの流麗なギター・ソロが白眉の、隠れた名曲。

I Don't Know Why (1975)

スティーヴィ・ワンダーのカヴァーで、録音は1969年6月。直後にブライアン・ジョーンズが亡くなっています。後半にバックが分厚くなりぐいぐい盛り上がる、隠れた名演。歌唱や演奏がやや荒っぽく完成度はあまり高くないのが、録音当時に未発表に終わった理由でしょう。

 いかがだったでしょうか。正直な話、この3倍の数でも足りないほどの名曲・名演揃いのストーンズ。選んだすべての曲がユーチューブに存在したのはさすがと言うべきか、困ったものと言うべきでしょうか。これを機に買い逃していた名作をぜひお買い上げください。

■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebookTwitter

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