最新SGチャートに見る"紅白”効果 演歌界の世代交代を後押しか

 さて。基本的にはこのコーナーではオリコンチャートの結果を元に分析しているので普段は配信チャートには触れないのだが、ちょっと驚くべき事態が生じているので、ここからは別の話題。

 「紅白歌合戦」の効果がよりビビッドに現れるのは、わざわざCDショップに足を運んで買いにいかなければならないパッケージよりもテレビを観て気になったらすぐにダウンロード購入できる配信チャートの方だろう――という推測のもと、1月上旬の各種配信チャートをチェックしてみたところ、まったく予想していなかった結果になっていたのだ。

 もちろん、Linked Horizon「紅蓮の弓矢」やAKB48「恋するフォーチュンクッキー」、AAA「恋音と雨空」やゆず「雨のち晴レルヤ」など、上位には紅白歌合戦で披露された楽曲が並んでいた。が、各種配信チャートで首位の座を守り続けたのは、紅白歌合戦とは全く関係のない、どころかオリコンシングルチャートにも登場したことのない曲だったのである。

 1月上旬の各種配信チャートで軒並み1位となっていたのは、SPICY CHOCOLATE 「ずっと feat.HAN-KUN & TEE」。12月から1月にかけて、この曲は巨大なヒットを記録している。12月中旬にはiTUNESやAMAZON MP3なども含め「配信チャート18冠」という偉業も成し遂げた。年末から年明けにかけてもヒットは続き、つい先日、レコチョクではスマートフォン音楽配信サービス開始以来史上初という「シングル総合」「着うた®ランキング」の5週連続同時1位を達成している。

 オリジナル・ラブの名曲「接吻」の雰囲気を強烈に彷彿とさせるこの曲は、2013年9月18日にリリースされたアルバム『渋谷 RAGGA SWEET COLLECTION 3』の収録曲。ヒットのきっかけは12月上旬に「NTTドコモ ネットワークCMソング」に起用されたこと。サビの歌詞は「会いたい会えないのに 愛してやまない」。つまりこれ、完璧なる「着うた系ポップス」の記録的ヒットなわけである。

 SPICY CHOCOLATEは90年代から地道に活動してきたジャパニーズ・レゲエ・シーンの重鎮、DJ CONTROLERことKATSUYUKI率いるレゲエサウンドクルー。もともとはジャマイカと日本を行き来していたようなキャリアの持ち主の彼だが、2011年から青山テルマや湘南乃風などをゲストに「着うた世代に刺さる」ラブソングを集めた同シリーズのリリースを開始している。この「ずっと feat.HAN-KUN & TEE」も収録される2月12日リリースのベスト盤『BEST OF 渋谷 RAGGA SWEET COLLECTION』も、おそらくかなりのヒットを記録するだろう。

 先日、この「チャート一刀両断」のコーナーでも執筆を担当しているさやわか氏のトークイベント『さやわか式☆現代文化論 第2回』で、宇野維正氏と共に参加し「着うた系ポップスは完全に下火になった」と断言した筆者であるが(参照:今、ボカロやアイドルをどう語るべきか 音楽ジャーナリスト3人が2013年のシーンを振り返る)、どうやら実情は全く違っていたようだ。

 猛省したい。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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