安藤サクラ×松岡茉優『万引き家族』対談 初参加となった是枝組の現場で感じたこと
是枝裕和監督最新作『万引き家族』が6月8日より公開となった。家族ぐるみで万引きなどを重ねながら生計を立て、東京の下町で質素に暮らす家族の“家族を超えた絆”を描いた本作は、現地時間5月19日に授賞式が開催された第71回カンヌ国際映画祭で、日本映画としては今村昌平監督の『うなぎ』以来21年ぶりとなる、最高賞のパルムドールを受賞した。
今回リアルサウンド映画部では、万引きを重ねる父・治(リリー・フランキー)の妻・信代を演じた安藤サクラと、信代の妹・亜紀を演じた松岡茉優にインタビューを行った。ともに是枝組初参加となった2人に、是枝監督の現場で感じたことや、お互いの印象などについて話を聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
安藤「是枝組の独特の空気感は、産後の私にはとても優しかった」
ーー安藤さんも松岡さんも今回が是枝組初参加となりましたが、最初に役の話を聞いたときの心境を教えてください。
松岡茉優(以下、松岡):今回、私は監督との面接からスタートしたのですが、もともと最初にいただいていたプロットでの役と私自身が全然違う人間だったので、きっと決まることはないだろうなと思っていました。ただ、他の作品でご挨拶させていただいた是枝監督と久々にお会いできるのはうれしいなと思って、会いに行ったというところがあって。なので、結果的に私がこの役に決まったと聞いたときは、ものすごく不安になりました。もちろん是枝組に入るのは夢でしたし、うれしかったのですが、私はあの役をどうすればいいのだろう……と。
ーー亜紀はもともと「とりえのない太った女の子」という設定だったそうですね。それを是枝監督がキャラクター設定も含め、松岡さんに合わせて脚本を書き直していったと。
松岡:そうですね。撮影が始まってからも、撮っている途中で台本が次々に変わっていきましたし、前日に「明日のことなんだけど……」という感じでメールが来たりするくらい、日々変わっていくことも多かったです。
安藤サクラ(以下、安藤):私も自分に話がきたのは意外でした。でも、産後初めての仕事がこういった家族の話で、しかもそれが是枝組というのは、ものすごくありがたい環境だなと思いました。しかも、是枝組の独特の空気感は、産後の私にはとても優しくて。この作品を通じて、自分のいろいろな変化に改めて気付くこともできました。産後のだらしない体をフィルムに焼き付けることもできましたし(笑)。
松岡:(笑)。
安藤:すごいタイミングでこの役柄を演じさせていただけたなと。
ーーリリー・フランキーさんとのラブシーンはとても印象に残りました。
安藤:サラッとした“事後”みたいな感じと言われていたんですけど、実際当日になってみたらかなりガッツリで。「しょうがねぇや」という気持ちで望みましたね(笑)。
ーー松岡さんが演じた亜紀も、JK見学店で働いているというなかなか挑戦的な役柄でした。
松岡:役作りのために実際にお店にもお邪魔したのですが、働いている女の子たちの表情がすごく明るかったんです。勝手に暗いイメージを抱いていたのですが、全然そうではなくて。だからあのシーンは、カラッとした感じを出したいなと思いました。普通に同世代の女の子たちが集まった、学校のような雰囲気といいますか。池松(壮亮)さんとのシーンは、他のシーンに比べてカット数も多くて、何度もテイクを重ねたので大変ではありましたが、時間が止まっているような、ゆっくり時間が流れていく感覚がありましたね。
安藤:深夜から朝まで撮影してたんだよね?
松岡:そうでした。JK見学店のセットと家のセットが近くにあったので、あの家から移動してすぐに池松さんに膝枕するのも恥ずかしかったですし、その後に家のセットに戻るのも恥ずかしかったですね。
安藤:私とリリーさん、2人がテストしている場にいたんだよね。イヤだろうなと思ったから私は見てはいなかったけど。
松岡:いましたよね? お2人がいるから、「やだ! なんでいるんですか!」って聞いたら、リリーさんに「別に見に来たわけじゃないよ」と言われて。「ちょっと自意識過剰だったかな」と思っていたんですけど、やっぱり見てたんですよね、リリーさん(笑)。
ーーそんなリリー・フランキーさんと樹木希林さんという是枝組常連の2人と、子役の城桧吏さんと佐々木みゆさんの2人との、現場の雰囲気はどうでしたか?
安藤:超楽しかったです。すごいくだらない話ばっかりして、ずっと爆笑していた印象しかないですね。
松岡:そうでしたね。子役の2人も、あんなに樹木さんの近くで騒げる子供は全国であの2人だけだと思えるくらいでした。作品の内容とはまた別で、本当に楽しい気持ちで毎日撮影に来ているんだなという感じで、それに引きずられて私もすごくハッピーな気持ちになりました。