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『半分、青い。』美術デザイナーが語る制作の裏側 「必ずしも“再現”を重視するわけではない」

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 永野芽郁が主演を務める連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合)。舞台が岐阜から東京へと移り、時代はバブル真っ只中の1990年。鈴愛(永野芽郁)がアシスタントとして身を寄せる漫画家・秋風羽織(豊川悦司)の事務所「オフィス・ティンカーベル」の華やかな装飾がSNS上で注目を集めるなど、時代を反映した美術セットが話題となっている。

 リアルサウンド映画部では、1999年の楡野家を中心とした本作の美術セットを取材し、美術デザイナーの掛幸善氏にインタビューも行った。作品の舞台となる美術セットはどのように出来上がっているのか。その制作の裏側から、美術デザイナーとしての仕事まで、じっくりと話を聞いた。

部屋の間取り・美術の配置が演出にもつながる

鈴愛の実家がある岐阜・ふくろう商店街の看板(1999年) 左奥に 「おしゃれ木田原」

ーー『半分、青い。』の世界観を作る美術セットはどうやってできているのでしょうか?

掛幸善(以下、掛):約半年にわたる朝ドラは最初から最後まで脚本が用意されているわけではありません。脚本が完成する前の全体プロットと、序盤の台本を読んでセットのイメージを作っていきます。年代と舞台となる場所を把握したら次はリサーチです。書籍や雑誌、映画・ドラマなどの調査から、実際に現地に足を運んで建物を見たり、昔から住んでいる方にお話を聞き、膨大な情報を頭の中に入れていきます。で、ここからセットのイメージや、建物の間取りを描いてみて、初めて演出部の方と相談という流れです。

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ーー演出部とは具体的にどんな相談を?

掛:部屋の間取り、配置自体が演出にもつながっていきます。特に本作では主人公の鈴愛が片耳が聴こえないため、自ずと家の中で座る位置なども決まってくるんです。すると、カメラをどこに置くことができるかも考えないといけない。そういった要素を加味しながら、台本を基に入念に相談をしていきます。ある程度形ができたところで、大道具・小道具・造園と各パートに発注を行い、ようやくセットが建つのですが、撮影前・撮影中にも随時細かいところを調整していきます。例えば、暖簾の高さ。実際に役者さんがセットの中で動いてみて、初めてちょうどいい高さが見えてきます。なのである程度収録が進んで、初めて現場を離れることができるといった具合です。

ーー台本の情報からイメージして、セットを建てていくのは大きな責任がともないますね。

掛:「こう作ってほしい」と頼まれるだけなら簡単なのですが、こちらから提案をし続けないといけません。その点がやりがいでもあり難しさでもあります。もちろん、脚本の北川さん、演出部からの要望もあるので、常にコミュニケーションしながら作り上げています。


ーー難しかった要望はありますか?

掛:鈴愛が幼なじみの律(佐藤健)を笛で呼ぶシーンが劇中に何度もありますが、律の部屋が2階にあり、1階から鈴愛が見上げている構図にするのは難しかったです。部屋の中にいても、律が左で鈴愛が右になるような位置関係が作れるような間取りを意識していました。

ーー見学した楡野家も時代の変遷とともに少しずつ変わっているのが分かります。

掛:楡野家は古き良きものがずっとあるイメージなんです。だから、時代の変化とともに電化製品は徐々に変化しているのですが、それ以外の小物にはあまり変化を作っていません。多くの人がイメージする“実家”の雰囲気を大切にしています。楡野家の性格も考えて、物が変化するというよりは増えていくようにしています。80年代と90年代を見比べていただけると分かるのですが、つくし食堂の壁も黒ずんできていたり、カウンター席に黄ばみが出ていたり、微妙な変化を施しています。

時代とともに「つくし食堂」のメニュー表と値段も変化

ーーほかの朝ドラ作品にも登場していた「大瀬良たばこ店」の看板がSNS上で話題となっていました。意外な小道具が登場するときがありますが、狙っている部分も?

掛:確かに狙ってやっているときもなくはないのですが、ほとんどがたまたまです(笑)。「大瀬良たばこ」店は、『ひよっこ』『とと姉ちゃん』でも使われているのを目にしていたので、気付かれると思いながら入れてもいいかなと。

「つくし食堂」入り口のディスプレイ

ーー視聴者の多くが当時を知っている近代は美術を作る上で難しさはありますか?

掛:戦前や戦時中よりも近代の方が難しい面があります。90年代は1、2年でものが大きく変化していくので、何を登場人物が使っているかでその性格も表れてしまいます。鈴愛が愛用しているラジカセは、1989年の時点ではもう古いものなんです。すでにCDコンポが出ています。でも、律の部屋にCDコンポがあっても、鈴愛の部屋にはラジカセのままがいいなと。

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ーーあくまでドラマであるので、当時なかったものも入れていたりするのですか?

掛:視聴者が求めるものは、当時の“再現”なのかもしれないのですが、“フィクション”としての小物も少し入れています。具体的なところで言うと、バブル全盛の時代は洋服などはカラフルな色彩になるのですが、家電製品や家具などはどんどんモノトーン化しています。でも、その点を忠実に再現してしまうと画面全体が暗いものになってしまう。朝ドラを観て、視聴者の方には元気になってもらいたいと思っているので、あえて色味があるものを入れるようにしています。鈴愛の真っ赤なラジカセはその象徴ですね。

      

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