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【ネタバレあり】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の“真の衝撃”を読み解く

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揺さぶられるヒーローたちの「正義」

 サノスが朝の日差しを眺めるシーンによって、本作は真のおそろしさを見せる。『ブラックパンサー』で「地球で一番美しい」と言われていた、太陽に照らされるワカンダ王国の景色を美しく思う心が、ブラックパンサーと悪役キルモンガー、双方が持つ王国への共通する愛情を表していたように、殺戮者サノスにも世界を愛する心があり、朝の美しさに感動する心があったのである。

 われわれは、歴史上の大量虐殺に関わった人物を悪魔のような狂人だと思いがちだし、手を下した人間を地獄の鬼のような存在だと思いがちだ。しかし、子どもすら殺害するホロコーストに関わった人間が、その日に帰宅して自分の子どもたちを抱きしめることができるように、現実では愛情豊かな人間が、矛盾なく殺戮者になることもできるのだ。サノスには深い愛情を感じる唯一の対象があった。彼はその人物のために涙を流す一方で、愛し合う人々を引き裂き、無残に殺害していく。

 彼が理性を失った、完全な狂人であれば安心できる。殺戮者サノスの示す愛情にわれわれ観客が動揺させられるのは、自分の内面とサノスの内面の間に本質的な違いを見出すのが難しいからであろう。それはつまり、自分自身も時と場合によっては殺戮者になりかねないという可能性を垣間見てしまうということである。そして、今まで「アベンジャーズ」シリーズの正義の原動力として機能していたはずの「愛」が、逆に正義を殺していくという、一つの真実を突きつけられ戦慄するのだ。

 アベンジャーズがいつでも完璧に正しいとは限らないということは、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で、正義の巻き添えになって命を落とす一般市民が出てしまったことで、すでに描かれている。だからこそアベンジャーズは、それぞれの「正義」を信じる二派に分かれたのだ。正義にいろいろなかたちがあるのならば、サノスの語る不完全な「正義」は、ヒーローたちの信じる不完全な「正義」と決定的に違うものだと言い切れるだろうか。悪を力でねじ伏せてきたアベンジャーズと、アベンジャーズを力でねじ伏せるサノスのどこに違いがあるのだろうか。本作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、サノスの内面をヒーロー以上に深く描くことで、最終的にそこまで突っ込んで観客の倫理観や固定観念を揺さぶってくる。

 では、ヒーローがヒーローでいるためには何が必要なのか。正義を正義たらしめるものとは、一体何なのだろうか。その最終的な結論は、『アベンジャーズ』最終作が出すであろうメッセージを待って、あらためて考えたいと思う。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
全国公開中
監督:アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ロバート・ダウニーJr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、ドン・チードル、トム・ホランド、チャドウィック・ボーズマン、クリス・プラット
原題:Avengers: Infinity War/全米公開:4月27日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018MARVEL
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/avengers-iw/home.html

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