中谷美紀、玉木宏らの演技が太い柱に 働く女性が共感『あなたには帰る家がある』の“あるある”

働く女性が共感する『あな家』の“あるある”

 結婚や出産で一度職場を離れた主婦が再び仕事に就くのは勇気がいる。ブランク期間が長ければ長いほど復職への不安は増す。

 4月13日から放送が始まった『あなたには帰る家がある』(TBS系)。中谷美紀演じる主人公の佐藤真弓は、長らく専業主婦だったが、ひとり娘が中学受験を終えたのを機に旅行代理店に復職する。

 1994年に刊行された山本文緒の原作小説では、真弓は幼い娘を持つ20代後半で夫の秀明を「ヒデ」と呼び、生命保険の外交員として働き始める。一方、ドラマの真弓はアラフォーで、夫の秀明(玉木宏)を「パパ」と呼ぶ。年齢や時代に沿ってキャラクターも再構築されている。娘が志望校に合格したことを「夢が叶ってひと安心」と言った真弓に、かつての同僚の由紀(笛木優子)は「それって娘さんの夢だよね? 真弓自身は夢はないわけ?」と訊ねる。小説では外交員を勧誘するのに真弓が使うパワーワードが“夢”で、夢を叶えるためには行動を起こさなくちゃ、と二の足を踏む女性の背中を押す。ドラマでは由紀にそれを言わせ、真弓を外の世界へ飛び出させた。

 真弓は意気揚々と職場に復帰するが、その気持ちはすぐに打ち砕かれる。PDFが何かもわからず、自分が時代から取り残されていたことを知って愕然とし、大きな失敗をしてしまう。「若い子のミスは笑って許してもらえるけど、おばさんのミスは笑ってももらえないよ」。真弓にこう言ってトドメを刺した由紀。おそらくこれは課長である由紀自身が肝に銘じている言葉だろう。

 アラフォーだけでなく、若い女性もまた別のつらさを抱える。真弓の指導を任された希望(トリンドル玲奈)も年上の中途半端な経験者に煩わされ、顧客の中年男(峰竜太)の執拗なセクハラに耐えている。彼女たちの年相応の苦悩はどれもとても身近だ。

 会社での疲労を隠し、笑顔を作って帰宅した真弓がまた切ない。真弓と秀明の共通の友人の圭介(駿河太郎)の店から家族3人分のカレーをテイクアウトして急いで帰ってきたのに、娘の麗奈(桜田ひより)は友達とごはんを食べてきたと言い、秀明はソファでごろりと横になったままいらないとのたまう。家族だからこその無意識な無遠慮さが生む“あるある”のこの光景。そして、鬱積していたものが一気に溢れて夫にキレ、リビングにひとり残された真弓はこみ上げる涙を堪えながらスプーンを口に運ぶ。第1話のハイライトと言っても過言ではないこのシーンは、既婚者だけでなく、働く女性すべてが激しく共感したのではないだろうか。

 「もともとなかった結婚願望が、さらになくなっていきそうです」と語った独身の中谷が演じることで、良い意味で現実から離れて痛さが幾分か薄まっているが、このリアルな既視感は100人の女性から意見を集めて練られた成果だろう。

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