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『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』から考える、アメリカ娯楽映画の状況と展望

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 ついに『ブラックパンサー』が、アメリカ国内興行収入で『タイタニック』を超え、アメリカ興行収入歴代3位にまでランクインした。非白人のキャストたちによる映画が、アメリカでここまでの成功を収めたのは前代未聞だ。

 『ブラックパンサー』の最大の特徴は、アメリカにおける黒人の歴史を踏まえた社会的な視点が全編に行き渡っているという点である。低予算ながら差別問題をホラーコメディーとして表現しスマッシュヒットした『ゲット・アウト』、差別構造のある社会で女性の進出を描いた『ワンダーウーマン』や『ズートピア』など、現在、ヒット作品の多くに「多様性」を強く意識した描写が見られる。それがヒットすることで、さらにそのような作品が増えていく。もはやアメリカでは、このような娯楽映画を観るということ自体が、大げさに言えば社会に対する、ある種の能動的な行為になりつつあるのかもしれない。

 しかし、今回紹介する作品は違う。本作『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は、何も考えずに受動的に楽しめばいいアトラクションのような映画だ。自分の殻を破っていく成長物語というテーマは持っていても、遊園地の乗り物を乗り終えて、「楽しかったねー」と言い合って、その後ほとんど何も残らない類の作品である。観客を不安にさせるような深刻な問題も描かれないし、驚かせるような意外な展開があるわけでもない。とはいえ本作は2017年アメリカ国内の興行収入ランキングでは4位にランクインする快挙を達成している。

 先進的な娯楽映画がヒットするなか、一方でこのように潮流から逆行しているように思える作品がヒットするというのは、何を意味しているのか。ここでは『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』を検証し、その視点からアメリカの娯楽映画の状況と展望を考えていきたい。

 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』は、1995年にヒットした、ロビン・ウィリアムズ主演のファンタジー映画『ジュマンジ』の設定をリニューアルした作品だ。『ジュマンジ』では、ボードゲームのなかで起きることが現実にも起きるというストーリーだったが、今回はTVゲームの世界の中に高校生たちが入ってしまい、現実世界に帰るためにゲームクリアを目指すという内容となっている。

 彼らはそれぞれ、自分とは異なる性質を持ったゲームキャラクターへと姿を変える。晴れの日にレインコートを着て外出してしまうナード(オタク)な男子高校生は、たくましさの極地といえるアクション・ヒーロー、ドウェイン・ジョンソンの姿をした冒険家に。授業中にも関わらず携帯電話で友達と会話する自己中心的な、セルフィー(自撮り)大好き女子高校生は、コメディー俳優ジャック・ブラックの姿をした地図専門家に。少々真面目過ぎるガリ勉女子は、モデルとして活躍しアクションもできる俳優カレン・ギランの姿をしたセクシー格闘家に。そして同級生に宿題をやらせる長身のアメフト部員は、小柄なコメディアンのケヴィン・ハートの姿をした、ヒーローの武器を調達するサポート役を引き受ける。

 4人の俳優たちはそれぞれ自分の見た目とは対極的なタイプの高校生を演じることになる。とりわけ楽しいのは、自分のタフな見た目や腕の太さにうっとりとして優越感を味わうドウェイン・ジョンソンと、高飛車でガーリーな言動や態度をとり続けるジャック・ブラックだ。95年の『ジュマンジ』では、『ジュラシック・パーク』で話題となったILMの視覚効果による、動物たちが街を暴走し、ゾウが乗用車を踏みつぶすシーンなどが話題となった。その要素を引き継いで、サイやカバの暴走シーンを用意した本作では、もちろんこのような描写が当時と同じように、驚きを持って迎えられることはない。本作の面白さの中心となるのは、あくまで高校生の内面を演じる俳優たちのアナログな演技にあり、むしろCGやセットを駆使したジュマンジ世界のビジュアルは、ありきたりで牧歌的ですらある。

      

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