『クーリンチェ少年殺人事件』主演チャン・チェンが語る、エドワード・ヤン監督たちと過ごした日々

チャン・チェン、『クーリンチェ』を振り返る

「ヤン監督は僕に役者の道を与えてくれた大事な存在」

20170320-brighter-sub2.jpeg

 

ーー改めて作品を観て、新たに気づいたことや新たな発見などはありましたか?

チャン・チェン:自分の演技については申し訳ないなと思います(笑)。自分が出演した作品を観るのは苦手なので……。それと、僕は当時、リサ・ヤン演じる小明の役柄が本当に理解できませんでした。非常に複雑なキャラクターでしたから。あれから25年経って改めて作品を観て一番感じるのは、より小明のことを理解できるようになったということですね。当時僕はまだ若かったので、キャラクターについてそこまで詳しく考えることもなく、脚本を読んでなんとなく理解して、そのまま演じるというだけでしたから。ヤン監督の中ではいろいろな考えがあったと思いますけどね。

ーー現場でのヤン監督はどのような人でしたか?

チャン・チェン:この作品は、25年前の当時としてはとても規模の大きな作品で、非常に厳しい現場でした。特にヤン監督はすべてのことに対して要求が高く、スタッフもみんな信念を持って作品に臨んでいました。それはやはり監督の存在や影響が大きいということだと思います。彼の期待値が高い分、我々もその高いレベルのものを求められるわけですからね。撮るだけでも大変な作品をよいものにしなければいけないわけですから、それは当然のことだと思います。あとこれはあまり知られていないのですが、ハニー役の声の吹替をヤン監督自身がやっているということを知っていましたか?

20170320-brighter-sub3.jpeg

 

ーーそうなんですか? それはまったく知りませんでした。

チャン・チェン:実はそうなんです。僕が『クーリンチェ少年殺人事件』のあとに出演させてもらった『カップルズ』でも、ヤン監督は重要なキャラクターの吹替を自らやっていました。どちらも哲学的なことだったりストーリーに関わる大事なことだったりを言うキャラクターなので、これは僕の勝手な想像ですが、ヤン監督はそういうふうに、本当に伝えたいことは自分の口で伝えたかったのではないでしょうか。

ーーなるほど。もう一度観て確認してみます。あなたは2014年に監督デビューも果たしましたが、ヤン監督から受けた影響もあるのでしょうか?

チャン・チェン:それは間違いなくあると思います。僕が思うヤン監督の最もすごかったところは、価値観に関する判断力です。どういうふうに表現したらいいかわからないのですが、ホウ・シャオシェン監督は感覚的な人で、エドワード・ヤン監督は理性的な人と言えるかもしれません。そのどちらにも大きな影響を受けていると言えるでしょう。監督としてもそうですが、ヤン監督は僕に役者の道を与えてくれた本当に大事な存在です。この作品があったからこそ、いまの役者としての自分がある。逆に、新たな作品に出演するたびに、超えるべき壁としてこの作品が常に目の前にあるとも言えます。『クーリンチェ少年殺人事件』は僕にとって間違いなく、絶対的に大事な作品です。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『クーリンチェ少年殺人事件』
角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて公開中
監督:エドワード・ヤン
出演:チャン・チェン、リサ・ヤン、ワン・チーザン、クー・ユールン、エレイン・ジン
配給:ビターズ・エンド
1991年/台湾/3時間56分
(c)1991 Kailidoscope
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる