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『ファンタビ』には“トランプ批判”が込められている? 社会派ファンタジーとしての側面を読む

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 ドナルド・トランプ大統領選勝利の報はアメリカのみならず、世界中の多くの人々に衝撃を与えた。このトランプ氏に対する、国内外でくすぶっている不安と反発が、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』に深く関わっていたと言ったら、意外に思うだろうか。

 全く無名の作家による児童文学でありながら、ジャンルの枠すら飛び越えて、現在、「史上最も売れたシリーズ」にまでなった、魔法使いの学校を舞台にしたファンタジー小説「ハリー・ポッター」シリーズの快挙、そして爆発的な勢いに乗って映画化シリーズも世界的な大ヒットを記録し、社会現象を巻き起こしたことは記憶に新しい。

 子供向けのファンタジー作品であり、かつ恋愛や青春、社会と若者の軋轢を描くヤングアダルト小説としての役割も担い、グロテスクな人間の心理や、死についてのダークな感覚など、一つのシリーズのなかに作家、J.K.ローリングの持つ世界観のありったけを、次から次に投入したことが、「ハリー・ポッター」シリーズが幅広い読者を惹きつけ、作者を含め作品を深く愛する信奉者を生んだ理由の一つだろう。また、作者自身の興味が読者の目線に近く、ある意味取っつきにくい存在ともなっていたファンタジーの領域を、ポップな視点で照らし直したということも、時代の要請とマッチしていたといえる。

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 映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、この作中に登場する魔法学校の教科書「幻の動物(ファンタスティック・ビースト)とその生息地」のアイディアを基に、新たにJ.K.ローリング自らが、初めて映画のために脚本を手掛けた企画である。つまり今までと異なり、物語の展開も質も、全く未知数のものが映画館で披露されるということだ。

 このスピンオフ企画は、本作の公開を待たずにどんどん膨らんで、ローリング自身が5部作になるだろうという発言をしている。これが本当なら、「ファンタスティック・ビースト」も、「ハリー・ポッター」級の超大作シリーズとなる見込みだ。第一作となる本作は、ニューヨークが舞台となっているが、次の作品ではパリが舞台となるのではないかという噂が早くも流れている。いずれにせよ本シリーズは、あくまで魔法学校を中心に多くが描かれていた「ハリー・ポッター」とは異なり、エディ・レッドメインが演じる魔法動物学者、ニュート・スキャマンダーが、007やインディ・ジョーンズのように各国の都市へ出向いて、現地の魔法動物と触れ合いながら、魔法界と人間界の対立を煽る邪悪な敵と戦っていく展開になりそうだ。

 J.K.ローリングのガーリーな感性は、本作でもやはり炸裂している。エディ・レッドメインやエズラ・ミラーなど女性ファンの多い、中性的でスウィートな魅力のある役者が演じるロマンス描写がその代表である。『インヒアレント・ヴァイス』で謎めいた女を演じていたキャサリン・ウォーターストンが、地味めのファッションのヒロインとして、消極的な性格の主人公と淡くぎこちないやりとりをするシーンは胸キュン必至だし、コリン・ファレル演じるダンディーな魔法使いと、エズラ・ミラー演じる美形の貧しい青年との、なまめかしさを感じるあやしげな関係も、一部ファンには見逃せないところだ。

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 舞台は、アメリカ文学の最高峰といわれる、F・スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」でも描かれた、「狂騒の20年代(ローリング・トウェンティーズ)」と呼ばれる、好景気に沸く時代のアメリカである。本作では、豪華な美術、衣装、特殊効果によって当時の雰囲気を見事に、そして幾分愛らしく再現しているが、注目すべきは、当時の好景気や大量消費時代の到来で浮かれて狂騒する人々より、そのようなきらびやかな世界から切り離された、路地裏に住む貧しい人々に、チャールズ・ディケンズを思い起こさせるような優しいまなざしを向けている点である。本作は、このような現実的な社会問題を、「ハリー・ポッター」よりもさらに徹底してファンタジー世界のなかにたっぷりと詰め込んでいるのが、大きな特徴なのだ。

      

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