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松本潤主演『99.9』、シリーズ初の前後編に キャラクターを深堀りした「前話」を振り返る

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 前回のコラムで、演出家が変わってドラマのテイストが好転してきていることに触れたばかりではあるが、第5話では再びチーフディレクターである木村ひさしの演出に戻ったようだ。金子文紀が演出を務めた前2回は、依頼人のドラマが大きな比重で描かれている点で、法律的視点を求める層ではなく、もっと漠然とドラマらしいストーリーを楽しみたい視聴者に訴求するものを狙っているようにも見えた。今回は木村に戻ったことで、第1話に回帰し、再び主人公たち弁護士のドラマに焦点を当ててきたようだ。(参照:松本潤主演『99.9』、演出家の違いでドラマはどう変化した? 「0.1%の真実」の描き方

 『99.9 刑事専門弁護士』第5話は、冒頭から相棒のパラリーガル・明石(片桐仁)の20度目ぐらいとなる司法試験の結果発表に出向く深山(松本潤)、好きなプロレス選手のイベントでにこやかな表情を見せる立花(榮倉奈々)。そして海外留学中だった娘を空港まで迎えに行く佐田(香川照之)と、それぞれのキャラの肉付けから始まったのである。

 本来であれば、メインキャラクターの肉付けというのは早い段階で行うものである。序盤でキャラの位置付けを明確にしておくことで、終盤のストーリーの妨げにならないようにするわけだ。そう考えると、ドラマも中盤に差し掛かった第5話で急に導入されると、どうも今更な感じも否めない。第2話から第4話にかけ、そういったものが最小限に抑えられていたから尚更である。

 その中でも、立花のプロレス好きを掘り下げたのは、オカダ・カズチカと外道のゲスト出演の都合だろうか。木村ひさしが監督を務めた嵐主演のシリーズ3作目『ピカ☆★☆ンチ LIFE IS HARD たぶん HAPPY』にもオカダ・カズチカは出演していたので、そのあたりのリンクはなかなか面白みがあるが、彼らが出演する序盤以降も、やたらと立花のセリフと行動がプロレスネタで埋め尽くされていたのはどうも気になってしまう。

 また、第1話で登場したような、地団駄を踏む明石に合いの手を入れてクイーンの『WE WILL ROCK YOU』に繋げるという小ネタや、料理をしながら考えをまとめる深山の姿といった緩急の“緩”にあたる部分が帰ってきたのだ。むしろ、こういった第1話への回帰は、ドラマを振り出しに戻すということなのだろうか。これまでのエピソードが、彼らの弁護士としての働きを示す導入に過ぎず、この後のエピソードでよりパーソナリティに迫っていくということを意味しているのかもしれない。

 そう考えると、恒例の親父ギャグに意味を持たせたことも納得できる。深山の父親の命日だからと、いとこの坂東健太(池田貴史)が持たせてくれたおにぎりを、ラグビーの練習をしている子供達を眺めながら食べている深山が回想する父との思い出で、彼の寒々しいギャグは父親譲りのものだったと判るわけだ。これでようやく第2話のラストで登場した深山の過去が少しだけ紐解かれてきたのである。

 今回取り上げられる事件は、やたらと複雑な案件であった。暴行事件を起こした依頼人の谷繁(千葉雄大)は接見中に倒れて意識不明に陥ってしまう。どうやら、事件時に転倒して頭を強く打ったことが原因だという。被疑者(もしくは被告人)が意識不明の昏睡状態に陥った際は、手続きを停止しなくてはならない。にも関わらず、深山は相変わらずのマイペースぶりで捜査を開始する。

 谷繁が被害者の三枝(平田満)に放った「おまえが殺したんだ」という言葉の真相を探るために、18年前に亡くなったという谷繁の父親と三枝の接点を調べていく深山たち。関係者への聞き込みを続けていくうちに、二人の接点だけでなく、その裏にあるもうひとつの事件とのつながりも判明していくのである。もはや、メインとなるはずの暴行事件がそっちのけで、18年前の別の事件がメインとなってしまっている印象を受ける。あくまでも、今回の暴行事件はもうひとつの事件へと繋がるためのきっかけに過ぎないということだろう。

 念のため振り返ってみると、これまでの依頼人といえば、濡れ衣を着せられた者ばかりで、彼らはみな無罪(または不起訴)となっている。第2話の風間俊介が演じた依頼人のみ、第三者の介入によって殺人が既遂となったことが判明し、殺人未遂罪に罪状が変わり起訴された。今回の依頼人に関しては、切り札の〝0.1%〟である「被害者に父親が殺された」という事実を前にしても、無罪にすることは報復を容認することになるので、決して描いてはいけない。おそらくは、何らかの形で示談に持ち込む顛末となるのだろうか。

 これまでのエピソードはすべて1回で完結していたが、今回はついに次回へと持ち越しとなった。第1話以来の登場となった、奥田瑛二演じる検事正ら検察の上層部が、18年前に起きたとある殺人事件の再審請求を何としても食い止めようとしている陰謀が同時に描かれ始めるのだ。その事件の重要な証人というのが、今回描かれた暴行傷害事件の被害者である三枝であり、事件の発生日時が谷繁の父親が死んだ日と同じなのである。つまり、三枝が谷繁の父親を殺していたということが判明すれば、その証言が効力を失い、再審請求が通る可能性が強まるというわけだ。

 ようやく、ここにきて検察側に動きが出てきたということは、これからドラマがさらに面白くなるに違いない。しかも、佐田が一連の事件の鍵を握っているということが判ったところで次回へ続くという、斑目法律事務所の刑事事件チームの分裂の様相さえも予感させるエンディングだっただけに、次回以降は硬派な演出で緊迫したムードが描かれることを期待したい。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■ドラマ情報
『99.9−刑事専門弁護士−』
出演:松本潤、香川照之、榮倉奈々ほか
脚本:宇田学
トリック監修:蒔田光治
プロデュース:瀬戸口克陽、佐野亜裕美
演出:木村ひさし、金子文紀、岡本伸吾
製作著作:TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/999tbs/

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