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成馬零一の直球ドラマ評論『とと姉ちゃん』一週目

『とと姉ちゃん』第一週で3つの“嘘”が描かれたワケは? 幼少期エピソードのポイントを探る

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 連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)がはじまった。本作は花森安治と共に雑誌「暮しの手帖」を創刊した大橋鎭子をモデルとした小橋常子(高畑充希)を主人公とする朝ドラだ。

 昭和三十三年。出版社に戻ってきた常子が、ベビーカーを押す女性たちと入れ違いになる場面から物語ははじまる。印象に残るのは大胆なカメラワークだ。常子を背中越しに追いかけながら、人が多い編集部内部を見せていく姿は臨場感がある。それは舞台が幼少期に移っても同様だ。子どもの視点を意識しているためか、低位置からの撮影が多く、ふつうのドラマよりも空が広く見えて、空間に広がりを感じる。

 『カーネーション』以降、朝ドラの映像レベルは上がっている。日本のテレビドラマは、フィックス(固定)撮影によるバストアップの映像が多く、照明も単調なものとなってしまいがちだが、『とと姉ちゃん』のカメラワークは実に雄弁で、画面が丁寧に作られている。自分たちが暮らす日常をスタイリッシュに撮ろうとする姿はそのまま、「暮しの手帖」のメッセージを映像に落とし込んでいるように感じた。

 近年の朝ドラは、冒頭で物語の山場(あるいは終盤)を見せてから、幼少期を第一週(1~6話)で、描くことが多い。そこで主人公は、今後の生き方に関わる大きな体験をする。本作では父の竹蔵(西島秀俊)の病死がそうだ。

小橋家には竹蔵が決めた家訓がある。
一、朝食は家族皆でとること
一、月に一度、家族皆でお出掛けすること
一、自分の服は、自分でたたむこと

 しかし、竹蔵は取引相手の大迫社長(ラサール石井)の引っ越しを手伝うことになり、おでかけは急遽中止となる。そのことを根に持った三女の美子(川上凜子)は、社長が酔った勢いで父にプレゼントしたピカッツァ(モデルはパブロ・ピカソ)の絵画に墨を塗ってしまう。次女の鞠子(須田琥珀)は、お風呂場で墨を消そうとするが、逆に絵を汚してしまう。常子(内田未来)は上から絵具を塗ってごまかそうとするものの、結局、絵のことは竹蔵に知られてしまう。竹蔵は三人を連れて社長の元に謝りに行く。だが、その絵は実は贋作なのだと社長から言われて、事なきを得る。この場面。普通のドラマだったら、嘘をついたことを、もっと悪いこととして描くのではないだろうか。あるいは、常子たちが正直に謝った誠意が認められるといった展開になるのではないかと思う。

 嘘にまつわるシーンはもう一つある。やがて、竹蔵は結核となり、寝たきりとなる。花見に行けずに桜は散ってしまったが、父に桜を見せてあげたいと思った常子たちは、竹蔵の会社の人たちといっしょに桃色の布を細かく切り刻み、桜が散った木に張り付けて、竹蔵に見せる。竹蔵は桜を見て綺麗だと感動するのだが、このシーンは贋作の絵にまつわるエピソードをより感動的なものに仕上げたものだ。

      

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