『いつ恋』いよいよ佳境へーー第八話で描かれた練、音、朝陽の濃密な三角関係

 第八話となり、いよいよ佳境に入ってきた『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(以下、『いつ恋』)。前回まではコミュニケーションを拒絶する曽田練(高良健吾)に対し、距離を詰めようとする杉原音(有村架純)の姿が描かれたが、今回は音の方がよそよそしく、常に敬語で話そうする。

 理由はもちろん音が、井吹朝陽(西島隆弘)からプロポーズされたからだ。音は、施設にいた認知症の園田さんに朝陽が毎日話しかけていたこと。三人で動物園にゴリラを見にいったこと。朝陽のおかげで素敵な思い出がたくさんできたことを練に話す。しかし「尊敬してるし、すごく感謝してます」と言うが、決して「好き」とは言わない。

 一方、音が大切な思い出にしていた園田さんのことを朝陽は覚えていなかった。「結婚のことは、もうちょっとゆっくり考えていかない?」という音に対して「発想を変えてみたらどうかな?」と言う朝陽。この台詞は、「再建案の件を考え直してほしい」と朝陽に懇願する社長に対して言った言葉と同じものだ。「説得しないで」と会話を止める音。まるでビジネスの交渉をする時のように音と接していた朝陽は、「結婚するか。別れるか。どっちかなんだよ」と言って、音を抱きしめる。

 第五話では朝陽は「僕だったら君に両想いをあげられるよ」と言って音を口説いていた。朝陽の行動は常に合理的で「与える/与えられる」という関係で動いている。もしかしたら、こういった考え方は父の征二郎(小日向文世)の影響なのかもしれない。征二郎との会食の席で、朝陽は音が大卒で父親が市役所の議会事務局に勤めていると嘘をつく。しかし征二郎はそれを見抜いていて「どこまでが本当でどこからが嘘なんだ?」と朝陽が席を外している時に尋ねる。音は、北海道から来たこと以外は全部ウソです。と謝るのだが、征二郎は「これは欠陥商品です。って、プレゼンする馬鹿はいない」と笑顔で応対する。ここで“欠陥商品”という言葉がサラリと出てくることに背筋が寒くなる。温和に話ながらもしっかりと値踏みをしているのだ。

 その後、音は自分の経歴や今までやってきたアルバイトについて話す。征二郎は映画『プリティ・ウーマン』を引き合いに出して「貧しいものはここ(心)が強い。君のような人は大歓迎です。幸せになりなさい」と言って音を歓迎する。コールガールとセレブの実業家が結ばれる『プリティ・ウーマン』の話をするあたり、音が売春をしていたのではと、思っていたのかもしれない。

 征二郎とのやりとりで疲弊した音は携帯の電源を切って朝陽の元からいなくなる。音が家に戻ると、そこには心配した練がいた。
「スト-カー」
「あぁ、ストーカーじゃないです」
「何?」
「引っ越し屋です」
第一話で練が「泥棒」と言われた場面と同じやりとりだ。第八話では、練と音がもう一度出会い直すかのように第一話のやりとりが反復されている。
「入り」
音は練を自分の部屋に入れる。この日は練の誕生日だった。佐引穣次(高橋一生)からもらったケーキを食べる二人。いつの間にか関西弁になっている音。

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