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巨匠ジャック・リヴェットが遺したものーーいまも受け継がれるヌーヴェルヴァーグの精神

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鶴巻忠弘
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 2016年1月29日。フランスを代表する映画監督ジャック・リヴェットがパリで死去した。享年87才。『カイエ・デュ・シネマ』誌の三代目編集長を務め、カンヌ映画祭でグランプリを獲得した『美しき諍い女』(91)の監督としてようやく日本でもその名が知られるようになった。1950年代末の仏映画界に革新的なムーヴメントを巻き起こしたヌーヴェルヴァーグの中心メンバーの一人として知られたリヴェットだったが、日本では比較的知名度が低い監督だった。238分という長尺の作品中、ほぼ全編にわたって全裸に近い姿で出演したエマニュエル・ベアールの美しさが話題を呼び、日本でも一大センセーションを巻き起こした『美しき諍い女』の大ヒットによって、回顧上映なども組まれることとなり、ようやくそのリヴェット作品の全貌が明らかになった。

 フランスが生んだリュミエール兄弟によって革新的な発展を遂げた映画産業に、新たな革命を巻き起こしたのがヌーヴェルヴァーグという『カイエ・デュ・シネマ』誌に集った若き批評家たちによる「作家主義」の“波”だった。ジャン・コクトーやルノワールが完成させてきたドラマ性を重視せず、ロケ撮影、同時録音、演出による“実験映画”的な趣を重視した作風がその特色で、ジャック・リヴェット、ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、エリック・ロメール、クロード・シャブロルといった、それまで映画の撮影現場にあまり直接係ってこなかった映画評論家たちが、ペンをカメラに持ち替えて作り始めた作品群、それがヌーヴェルヴァーグである。

 そのヌーヴェルヴァーグの第1回作品と言われている35mm短編映画『王手飛車取り』(56)を監督したのが、リヴェットだった。カイエ派のシャブロルやトリュフォー、ゴタールそしてロメールまでもが協力して完成させた記念すべき作品をきっかけに、メンバーは次々に短編作品を発表。そしてシャブロルが監督した初の長編作品『美しきセルジュ』(58)の成功をきっかけに、ヌーヴェルヴァーグの代表作が次々に発表されていく。中でも革新的な編集技法を駆使し、いまだに根強く愛されているヌーヴェルヴァーグ作品として知られるゴタールの『勝手にしやがれ』(59)を発表した1958年はヌーヴェルヴァーグ元年と呼ばれている。

 日本でも松竹ヌーヴェルヴァーグとして大島渚が『青春残酷物語』(60)を発表し、フランス国内だけに留まらず全世界の若きフィルムメイカー達を先導した。1962年にカンヌ映画祭で起きてしまったゴダールとトリュフォーの決裂をもって、ヌーヴェルヴァーグは終焉を迎えたが、その精神は途絶えることなく、ゴダールが現役でいまだに作品を発表し続けていることは周知の事実である。

     
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