広瀬すず、清純派から実力派へ 『怪盗 山猫』に見る演技の変化を考察

 2015年にもっとも躍進を遂げた女優のひとりである広瀬すずに対し、青春期特有の瑞々しさから“清純派女優”というイメージを抱く人々は少なくないだろう。だが、果たして本当にそうだろうか?

 たしかに、ドラマ初主演作『学校のカイダン』で演じた春菜ツバメ役は、生徒会長の役目を半ば強引に押しつけられ、そのなかでも奮闘するというものだったし、第39回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞した『海街diary』での浅野すず役は、思春期ならではの屈折した心情を上手く表現していたものの、それもまた純粋さの表れとして捉えられるものだった。こうした役柄を演じたことが、親しみやすいなだらかな人物像の形成に繋がると同時に、イメージを固定化していったのだと思う。

 しかし、彼女を単に“清純派女優”として括るのは、少し違うのではないか。筆者がこのことを強く実感したのは、日本テレビで1月16日から放送中のドラマ、『怪盗 山猫』第1話を観たときだ。このドラマで広瀬は、高杉真央役を演じている。学校では同級生からのいじめを受けるなど孤独感に苛まれているが、実は“魔王”なる通り名で世間を賑わせる天才ハッカーの高校生という設定。内向的な性格で、あまり感情を表に出さないのも特徴だ。

 ところが、この設定は『怪盗 山猫』第1話の終盤で突如として崩れる。亀梨和也演じる怪盗 山猫に、自分が犯してきた罪や、その罪と向き合わなかったことを執拗に責められたとき、真央は突然喚き散らし、感情を爆発させるのだ。目つきもほのかに殺気を帯び、血走らせているように見えた。その鋭いオーラはもはや狂気的といえるほどだった。「こういう演技もできるのか」と筆者は驚嘆してしまったし、それは多くの視聴者も同じだと思う。

 広瀬は現在17歳の現役高校生なのだから、20代になってから徐々にイメージの転換を図るという戦略もあったはずだ。実際、映画『紙の月』で宮沢りえ演じる梅澤梨花役の中学生時代を演じた平祐奈や、『セーラー服と機関銃 - 卒業 -』で映画初主演を果たす橋本環奈など、彼女と同年代の女優たちの多くは“清純さ”を前面に打ちだしているし、それは真っ当なやり方だろう。ではなぜ、広瀬はいちはやく“清純さ”という殻を打ち破りはじめたのだろうか。

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