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『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』フランソワ・ジラール監督インタビュー

美声に包まれた音楽映画『ボーイ・ソプラノ』監督が語る、映画作りで才能よりも大切なこと

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牛津厚信
音楽
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 『レッド・バイオリン』(98年)や『シルク』(07年)を見ても分かる通り、フランソワ・ジラール監督の手掛ける映画は主人公やそのテーマ性が果敢に境界を越え、未知なる世界へ手を伸ばそうとする。そのダイナミックな創作世界は映画だけにとどまらず、彼はシルク・ドゥ・ソレイユのステージ、さらにはオペラや演劇にまでその領域を広げ、そのいずれにおいても観客の割れんばかりの喝采を獲得してきた。

 そんな名匠が新たに手掛けるのは、奇跡の歌声に恵まれたひとりの少年が名門合唱団で才能を開花させていく物語。今回で来日25回目。日本通としても知られるジラールは、トレードマークのモジャモジャ頭をなびかせ、メガネの奥で少年のような目をきらきらと輝かせながら、この最新作に込めた思いを語ってくれた。

「小さいけれど達成感のある、忘れがたい作品」

——最新作の『ボーイ・ソプラノ』、とても素晴らしい作品で感動しました。ジラール作品といえば壮大な世界観をイメージしがちですが、今回は小規模な中に力強い輝きを秘めた内容に仕上がっていますね。

ジラール:そうだね、確かに小規模なバジェットでの製作になった。でも僕の初期作品はどれも低予算で必死に作り上げた映画ばかりだったからむしろ懐かしい感じがしたよ。こうやってキャリアを重ねてきた今振り返ってみると、自分が追い求めるものはスケールの大きさや予算などではないことを痛感させられるんだ。シルク・ドゥ・ソレイユやメトロポリタン・オペラの仕事も大規模なものだったけれど、中谷美紀さんとご一緒した舞台「猟銃」もそれと同じくらい意義深いプロジェクトだったし、『ボーイ・ソプラノ』も達成感のある忘れがたい作品に仕上がったと思っている。

——今回の脚本家ベン・リプリーは、SF映画としてファンの多い『ミッション:8ミニッツ』(11年)を生み出した才人でもありますよね。

ジラール:そう、まるでジャンルが違うだろう? 実はね、『ボーイ・ソプラノ』はベンが大学を卒業してすぐに書いた脚本だったんだ。その後、彼は全く違うジャンルに飛び込んで成功を収めるわけだけれど、一方の『ボーイ・ソプラノ』は映画化まで実に15年の歳月を要することになった。僕ら作り手は自分が率先して企画を選び取っていると思いがちだけれど、実は企画の方が僕らを選んでくれているのかもしれないね。

「ダスティンがいつも支えてくれた」

——少年を導く教師役のダスティン・ホフマンはさすがの存在感でした。彼は本作の直前に初監督となる音楽映画『カルテット』(12年)を撮り上げてますよね。

ジラール:彼の『カルテット』は素晴らしい作品だったね。あの映画でタフなスケジュールや資金難といった映画監督として不可避なバトルを繰り広げた直後だったからこそ、彼は『ボーイ・ソプラノ』に最大限のサポートをしてくれたし、監督である僕をいつも勇気づけてくれたよ。彼の貢献なくしてこの映画は生まれ得なかったと断言していい。

——彼ほどの名優が現場を訪れると、キャストやスタッフは少なからず緊張するものなのですか?

ジラール:ははは、最初に言っておこう。その心配は皆無だった。なぜなら現場での彼はずーーっと喋ってるから。身近なキャストやスタッフ、それにケータリングの係にまで話しかけて輪を広げていくんだ。彼はとても謙虚な人ではあるけれど、自分が知名度のある俳優で、ひとつ間違うと相手を極度に緊張させてしまうリスクをちゃんと承知している。だからこそ自ら率先して居心地のよい空気を作り出そうとする。そこが彼の凄さだよね。

——本作で描かれる教師と生徒の関係性はとても面白いですね。ふたりは親子のようでもあり、またはライバル、あるいは互いの分身のように感じられる瞬間さえあります。

ジラール:そうだね、この点に関しては事前にダスティンとじっくり話し合って、相互性を持たせようと決めていた。ふたりの師弟関係は師から弟子へという一方通行なものではなくて、逆もあり得る、とね。彼らは互いに魂を奏で、影響を与え合う存在なんだ。だからこそクライマックスには先生にとっての旅立ちの時も用意されている。

——とても音楽的な関係なんですね。

「そう、いわばデュエットだね」

     
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