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『夷曲一揆』インタビュー

怒髪天が掲げる“ロックバンドたるもの”という矜持 「それでも言わずにいられないものが本物」

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 怒髪天がやってくれた。思ったことを口に出せば、歯に衣着せぬ物言いだと攻められ、言い方を柔らかくすれば、曲解されて誤解を生み騒動になる。「炎上回避」などという、当たり障りのない表現が当たり前になってしまっている昨今に、「ロックバンドたるもの」という矜持を高らかに掲げ、問答無用に世相をぶった斬る。そんな気持ちいいほどの衝撃的問題作が、7月11日にリリースされるニューアルバム『夷曲一揆』だ。

 怒髪天ファンはもちろん、それ以外の音楽リスナーも、演者側であるロックバンドも、アーティストも、そして音楽業界関係者も、メディアも……、ロックを愛する人すべてに聴いてもらいたい、この問題作品について、全作詞を手掛けた増子直純(Vo)と全作曲者である上原子友康(Gt)にたっぷりと話を聞いた。(冬将軍)

 「いい大人が青臭いことを言う稚拙さがロック」(増子)

ーーとんでもないアルバムが出来上がりましたね。

増子直純(以下、増子):今回は本当に容赦なし、忖度なしで「これはできるのか?」「これを出せるのか?」という限界までやってみようと思ってね。結果、「ダメだ!」ということは一つもなかったという……すごいよね? パンクバンドの後輩たちがびっくりしてたからね、「これ、メジャーで大丈夫なんですか!?」って(笑)。

ーーそれほどまでの強烈な歌詞は、先にあったものなのでしょうか。それとも曲が先だったのですか?

増子:ここ10年くらいは作業効率も考えて、詞先と曲先、半々でやってきたんだけど。歌詞を書いたものに曲をつけて、曲ができたものに歌詞をつけていく。そうすると同時進行でできるでしょ。今回も5曲分を詞先で渡したんだけど、それが一つも採用されなかったんだよ。それ以上に友康の欲求により、曲がバンバンできちゃって。「この曲いいね、これもいいね」なんて言ってるうちに、俺が最初に書いたヤツは全部ストックになっちゃった。だから今回は全部、詞が後なんだよね。

上原子友康(以下、上原子):昔は、100パーセント曲が完成したところに、全然違う雰囲気の詞がついてくることが面白くて、そこを楽しんでたところもあったんですけど。今はそういうことよりも曲をより広げてくれる詞がくるので、幅の広がり方が凄いんですね。それは昔はなかったことで。だから、曲先とは言っても、昔とは違うんですよ。

ーーその辺りは意識的に作っているのですか?

増子:「あざとく狙っていかない」というところは意識しているね。これだけ一緒にやっていれば、お互いに技術的な向上はあるんだけど、そこを見せつける、垣間見させることを潔しとしない。もっと内面的なもの、「精神論ありき」みたいなさ。ロックバンドらしい作り方だよね。

上原子:「びっくりさせてやろう」「面白い曲を作ろう」とか、そういうところではもう作ってないです。当然、自分たちにとって新鮮な曲は作り続けていくんですけど。しっかりとした核となるものがあるからこそ、遊べる部分があるわけで。

増子:アレンジでいえば、“削ぎ落とす”ことでできること、ギミックではなくシンプルを重視したね。定石から外れているところはいくつもあるんだけど、普通に聴くぶんにはそこへ気をとられない。それくらいの具合って、すごく大事だと思うんだよ。やってるほうは演奏する楽しみでもあるから、仕掛けをいろいろ入れていくんだけど、そこが聴き手の負担にならない。いま、若い連中がやってる音楽って、複雑であることがステータスにもなっていて、「それがわかる俺、カッコいい」というのが聴き手の悦びにもなってるじゃない。それもあっていいとは思うけど、俺はもっと本質的なところで音楽を作っていきたいよ。

ーーそれこそ、“サウンドありき”でやってるバンドもありますよね。「こういう曲をやりたいから、こういうサウンドで、それにはこういう機材が必要で」といったように。

増子:いま、バンドやってる子らって、音楽やりたくてバンドやってるんだよね。でも俺らは音楽の前に「叫びたい」「噛みつきたい」とか、そういうフラストレーションやパッションをぶちまけたい、というのが先にあるから。楽器を演奏できるようになってからバンドを組む、じゃないんだよ。誰がどの楽器をやるかわからない状態でバンドを組むから。そこは“似て非なり”なところだよね。衝動や情熱を伝える手段というのが、たまたま音楽であり、ロックだった、というだけだから。

上原子:いつだって、とにかく「圧倒的なものを作りたい」……それしかないんです。そこはどんなギターを使って、どんな機材を使って、というハード面ではなく。もっと、この4人の人間がやっているんだ、ぶっとい4本の柱がぶつかり合っているんだ、ということを音で出したいんですよ。昨年、昔の曲に向き合う機会があったんですけど。あの時はこういうこと考えて、こういう曲を作ってたんだなとか、いろいろ気づくことがあって。それを踏まえて「いま何をやるか」を考えた答えが今回のアルバムに表れていると思います。

ーーいつも以上に、ストレートなプレイと図太い音が印象的でした。

上原子:曲を形にしていく過程で、最初は楽器隊3人だけでスタジオに入るんですけど。あれこれ考えるというよりは、「いま持ってるものを瞬間的に受け止めながら音にする」っていう裸の部分が大きかったんだと思うんです。曲を聴いたときに坂(坂詰克彦/Dr)さんが「俺はこう叩く」、シミ(清水泰次/Ba)が「こういうベースを弾こう」という直感的につけたフレーズが多いんです。

増子:気をつけてるのは「アレンジの被りがない」ということくらい。タイプの違う曲がいろいろ入ってるけど、どれをとっても俺らにしかできないものだよ。“オリジナリティ”っていうのが、ものづくりの中では究極なものだし、そこに関していえば、他に類を見ないものはできたかなと。あとは好みだし、「良い悪い」「売れる売れない」はまた別の話だから。ただ、今までの俺たちを好きなヤツらは間違いなく「ものすごく好き」だと思う。これまでを上回る味の濃さだと思うから。それは間違いないね。

上原子:あえて「自分たちらしい個性を出そう」みたいなことはまったく考えてないんですよね。ただただ自分たちがカッコいいと思うビートだったり、フレーズだったり、グッとくるメロディを書きたい、それだけを4人でやりたい、というだけのスタンスでやってるんです。それがいつまにか「濃い」と言われるようになったんですけど、あんまり自覚はないんですよ。ただ、他にやってる人がいないのを見ると、やっぱ独自のものなのかな、とは思うんですけど。でも、これぐらいやらなきゃやり甲斐を感じないというか、バンドって本来そういうものですよね。

増子:でもまぁ、他のバンド見て「薄い」と思うんだから、濃いんだろうな。

(一同笑)

ーーアルバムに込められたメッセージテーマについてお伺いしたいのですが、それを象徴するのは何と言っても「HONKAI」ですね。

増子:「ロックバンドってなんなんだよ?」というところを歌った曲だね。この2018年にやらなきゃならないこと、叫びたいこと、人に言いたいことは「あの娘が好きだ」じゃないだろう。ああいえば「右だ」、こういえば「左だ」と言われる……、そんなの「知ったことか!」って話だよ。〈嫌なモノのは嫌だ〉というだけであって、そこに右も左もないわけ。〈政治宗教 そんなもんクソ喰らえ〉、これくらいストレートに言わなきゃいけない。パンクやロックというのは反社会的であったり、自分の意見をはっきり言う、それが俺らのロックの原体験だからさ。どうとでも取れる様には書かない、誰が聴いても取り違いのないようなことを言ってみる。それが一番いいんじゃないかな。しかも50歳過ぎてる俺たちがそれをやるっていうことが重要で。いい大人が青臭いことを言う稚拙さがロックだし、みっともなさの中にある真実というか、それでも言わずにいられないものが本物だと思うんだよ。我慢できるものは、所詮、我慢できる程度のものなんだよね。

ーー社会に対する不満は今も昔もあるわけで。そうした“代弁者”であったはずのロックバンドが、周りの反応が気になって、言いたいことを言ってない現況もありますね。

増子:みんな、オブラートに包み過ぎてるよね。俺らはやっぱアナーキーとか聴いて育ってきたから。あの頃の主張なんて「なんか気にくわねぇ!」なんだよね。でもそこから始まるものって絶対にあるからさ。大事なのは聴いたヤツらがどう思うかってことだしさ。「HONKAI」はサウンドも80年代的なところが入ってて。俺としては、初期のBOØWYなんだよね。最初の歌い方とか、ちょっと真似してみたり。わかりづらいだろうけど(笑)。

上原子:俺はARB気分で作ってたんだけど(笑)。

増子:あの辺のバンドって、身も蓋もないことをはっきり歌うじゃん。それがロックなんだよね。

上原子:それを軽快な8ビートに乗せて、ちょっと綺麗にハモってたりとか。そういうのがグッとくるんですよね。

ーー曲順の畳み掛けもいいですよね。怒髪天節炸裂の「裸武士」で〈スッポンポン〉と騒ぎ立てた次がこれですし。

増子:恐ろしいハードパンチが2発続くからね。曲順考えるときもこれはドン!ドン!といったほうがいいだろうって。

ーーそしてガラリと雰囲気が変わって、「春、風船」へ。

増子:「春、風船」は綺麗な曲なんだけど、絶望的に悲しい曲。救いがない。そこに希望は……もうないから。「戻ってこない」ということ、そして、「忘れる」ということ。どっちに行っても悲しい。ただ、それを考えられるということ、風船を見ながらね。そういう時間も本人にとってはいいものなんだと。

上原子:これは「春っぽい曲を作ろう」というわけではなかったんです。楽器隊だけでやってたときは、力強くシンガロングが起こるようなイメージで進めていました。この歌詞がのったら全然違う方向に曲が引っ張られて行って、アレンジが変わって。今作の中で一番キャッチーな曲かもしれないですね。

増子:完成度が高いよね。作ってたときに話してたんだけど、誰か別の人に提供していれば、売れたかもしれない曲だよ(笑)。

      

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