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『SPECIAL OTHERS 野音2018(QUTIMA Ver.24)』

SPECIAL OTHERSが貫く音楽を介した純粋なコミュニケーション 2年半ぶり日比谷野音公演レポ

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 「SPECIAL OTHERSの野音ライブに行く」と人に言うと、必ず「いいですね!」「気持ちよさそう」「楽しんできてください」といった反応が返ってくる。ライブレポートのために観させてもらうので、もちろん仕事ではあるのだが、音楽関係者、音楽ファンの間では“スペアザの野音=絶対に楽しいはず”というイメージができあがっていて、彼らのライブに足を運ぶオーディエンスは実際、最初から最後までゆったりと楽しみまくっている。

 2018年4月30日、SPECIAL OTHERSが日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ『SPECIAL OTHERS 野音2018(QUTIMA Ver.24)』を開催した。スペアザの日比谷野音でのライブは2015年10月17日の『QUTIMA Ver.19 SPECIAL OTHERS 野音2015』以来、約2年半ぶり。宮原“TOYIN”良太(Dr)は「単に抽選に当たらなかったんですよ(笑)。やっと当たりました!」と笑顔で語っていたが、久々の日比谷野音でのライブで彼らは、どこまでもスペアザらしい、気持ち良くて豊かな音楽を生み出してみせた。

 この日の東京の最高気温は27度。ときどき涼しい風が吹き抜ける薄曇りで、暑くも寒くもなく“これ、1年でいちばん気持ちいい日では?”という状況。あちらこちらから“プシュ”というビール缶を開ける音が聞こえてきて、開演前から楽しそうに盛り上がっている。子供連れの姿もあり、雰囲気は野外フェスに限りなく近い。

 16時半、まずは柳下“DAYO”武史(Gt)がステージに現れ、軽やかなフレーズを奏で始める。そこに宮原に加わり“Yagi & Ryota”によるセッションへ。さらに芹澤“REMI”優真(Key)と又吉“SEGUN”優也(Ba)が登場し「Tomorrow」が披露される。テーマ(主題)をギター、鍵盤、ベースで受け渡すように演奏しながら、後半ではBPMを上げ、ナチュラルなアッパー感を生み出す。観客はもちろん、心地よく身体を揺らし、笑顔で楽しんでいる。その後も「Wait for The Sun」「Good morning」といった人気曲を次々と演奏。曲間に即興的なセッションを挟み、楽曲自体にも音源とは違うアレンジが加わっているのだが、メインとなるフレーズや基本的な展開には手を加えず、新鮮さと安心感をバランスよく味わうことができる。耳に残るキャッチ—なフレーズ、さらに芹澤のエレピの音色、宮原の個性的なビートなど、すべての要素がスペアザ以外では体感できないものばかり。言うまでもなく“他に代えが効かない”ということも、スペアザがこれほどまで強く支持されている理由だ。1stセットの最後は「All Things」。自然な揺れを感じさせるグルーヴ、素朴なメロディが会場全体に広がり、身体と心が解きほぐされていくのがわかる。

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 インターバルの雰囲気も最高。そのあたりで子供を遊ばせている親、売店にビールを買いに行くカップル、会場をバックに写真を撮ってSNSにアップしている女の子のグループ。こうやって全員が好きなように楽しめる場所を提供することも、スペアザが10年以上に時間をかけて積み上げたものなんだろう……などと思っていると、いつの間にかメンバーがステージに登場し、ゆるりと2ndセットが始まる。

 まずは軽いセッションから始まり、レイドバックしたアンサンブルが心地いい「Go home」へ。観客は1stセットのとき以上にリラックスしまくり、普通におしゃべりしたり、お菓子を食べたり、ビールを飲みながら身体を揺らす。筆者は(ライターとして当たり前ですが)基本的にしっかり音楽を聴きたいタイプなので、他の観客が演奏中にしゃべってたりするとイラッとするのだが、スペアザの場合はほとんど気にならない。たとえばビル・エヴァンス・トリオの『Waltz for Debby』(NYの老舗クラブ“ヴィレジ・ヴァンガード”のライブ録音。グラスがぶつかる音、客の話声が混じっている)のように、その場の雰囲気も音楽の一部になっているのだ。スペアザのメンバーも手拍子を要求したり、“盛り上がっていきましょう”みたいな声を発することはなく、ただひたすら演奏を楽しんでいるように見える。

 起伏に富んだビートとメロディを軸にした「Week」あたりから、ライブは徐々に熱気を帯びていく。ナチュラルな高揚感をたたえた演奏をたっぷり浴びた観客は、手拍子、口笛、拍手でリアクションを返す。“自由に楽しんでほしい”という意志のもと、音楽を介した純粋なコミュニケーションを結ぶーーこのスタイルもまた、スペアザがずっと貫いていることだ。

 ここからライブは終盤。まず、芹澤が鍵盤ハーモニカ、柳下がアコースティックギター、又吉がスネア、宮原がボンゴに楽器を持ち代え、ステージの前方で「Sunrise」。オーガニックな響きに身を任せていると、柳下、又吉、宮原が元の位置に戻り、ひとり残った芹澤が耳なじみのあるメロディを奏でた瞬間、観客は大きな歓声を上げる。始まったのは「Laurentech」。サビのフレーズで大合唱が生まれ、きわめて自然な一体感へとつながる。

 この後は、この日唯一のMC。「自分たちのMCはお客さんを盛り上げるのではなくて、僕らが言いたいことを言うだけ」(芹澤)という言葉通り、これみよがしな“いい話”などはまったくなく、「芹澤、『Laurentech』のイントロのところ、間違えただろ」「あそこはいくら練習してもできない(笑)」といったトークが繰り広げられる。さらに柳下が「雨も降らなかったし、“晴れバンド”としての面目を保てました」と笑顔でコメント。最後に又吉が「眺めがいいですね。みんなも楽しそうで良かった。……そろそろやろうかな」と本編ラストの「PB」へ。この日、もっとも攻撃的なプレイで観客を沸かせた。

 アンコールでは「LIGHT」を披露。白いライトの放射とともに鋭利なサウンドを響かせ、久しぶりの野音ライブのエンディングを飾った。“好きな音楽をやり通す”という基本的な姿勢をまったく崩さないまま、日本を代表するインストバンドして確固たる存在感を放ち続けるSPECIAL OTHERS。余計な演出やMC、客を煽ることもなく、豊かな響きを含んだ音楽によって、ただただ心地よい空間を作り出す。終演後に残るのは“気持ち良かった。また彼らの音楽を生で聴きたい”という余韻。“初めまして”の観客からコアなファンまで、すべてのオーディエンスを完全に満足させる素晴らしいステージだった。5月26日からスタートするSPECIAL OTHERS ACOUSTICのツアー(ニューアルバム『Telepathy』のリリースツアー)にも大いに期待したい。

(撮影=高田 梓)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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