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小袋成彬、Superorganism、The fin……2018年のムードを伝える新世代アーティスト6選

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 今回の新譜キュレーションで紹介するのは、小袋成彬、Superorganism 、ジョルジャ・スミス、The fin.、LOWPOPLTD.、SILYUSという6組のニューカマー。結果的に、東京を拠点に活動する2アーティスト、ロンドンを拠点に活動する4アーティストをセレクトすることになった。こういった新たな世代の楽曲を聴いていると、音楽シーンのボーダレス化がさらに進みつつある2018年のムードを感じる。

小袋成彬『分離派の夏』

 先行配信された「Lonely One feat.宇多田ヒカル」も大きな注目を集めた小袋成彬の1stアルバム『分離派の夏』。4月25日のリリースを前にいち早く聴かせてもらったが、とても濃く、鮮烈なアルバムだ。聴き流せない。サウンドのベース自体はオルタナティブR&Bにあるのだけれど、トレンドを意識するというより、彼自身の美意識を深く研ぎ澄ますことで楽曲を作っている感がある。

 ハイトーンの歌声と耳を引くコーラスワークや、シンプルなビートと乾いた切なさを持つ旋律のような、アルバムに込められた様々なディティールから伝わってくるのは、彼が今の時代に「文学」として届く音楽表現を貫いているということ。

 かつて2人組ユニットN.O.R.Kのヴォーカリストとして活動し、その後はレーベル<Tokyo Recordings>を主宰しプロデュースワークなど裏方としての道を選んでいた彼。しかしこうして「歌うこと」を選んだことの背景には、やはり宇多田ヒカルとの出会いが大きな刺激となったのだろう。必然的な才能の結びつきを感じる。

小袋成彬 1stアルバム「分離派の夏」ティザー映像

Superorganism『superorganism』

 ロンドンを拠点に活動する、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどなど多国籍な面々が集った8人組、Superorganism。昨年初めの結成からフランク・オーシャンが自身のラジオ番組で紹介するなどのフックアップもあっていきなり知名度を高め、「Something For Your M.I.N.D.」や「Everybody Wants to Be Famous」と発表したシングルがどんどん評判を高めてきたグループなのだが、3月2日にリリースされた1stアルバム『superorganism』は、そのセンスが間違いないものであることを証明する一枚。90年代のローファイポップと、ヒップホップと、インディエレクトロと、サイケデリックポップと、いろんな音楽を雑食的に吸収して、風通しのいいアウトプットを生み出している。18歳の日本人ボーカリストOronoのキュートさと物怖じしない芯の強さがにじみ出ている声もいい。

 「Nai’s March」は東京を舞台にしたリリックのユーモラスなガジェットポップなのだけれど、ゲームの音や水の跳ねる音に混じって、電車の車内アナウンスと日本人なら耳馴染みのある緊急地震速報の音が差し込まれたりする。かと思えば韓国語の歌があったりもする。そういうところも耳を引く。

 初来日ライブも観たけれど、その印象はまさに「無垢な万能」。当たり前のように国境も世代もジャンルも超えているグループ。これからがとても楽しみ。

Superorganism – Reflections On The Screen (Official Video)

ジョルジャ・スミス『Let Me Down』

 この先のUKを代表する存在になっていきそうなのが、若干20歳の女性ソウルシンガー、ジョルジャ・スミス。昨年12月には英国最大の音楽アワード「ブリット・アワーズ」でかつてアデルやサム・スミスも受賞した「Critics’ Choice」を受賞するなど状況も追い風となっているが、なにより、ストームジーをフィーチャリングに迎えた新曲「Let Me Down」が素晴らしい。

 憂いを帯びたメロディに、艶のある歌声が彼女の最大の魅力だ。ジャズやソウルのバックグラウンドも含めてエイミー・ワインハウスを彷彿とさせるような響きもある。そして大きいのはドレイクの「Get It Together ft. Black Coffee&Jorja Smith」への客演参加が象徴するように、アメリカのヒップホップシーンとの繋がりだろう。ストームジーが代表するグライムシーンともトラックメイカー ・プレディターとコラボした「On My Mind」が象徴するようなUKガラージとも密接な関係性を持つ。

 最近ではケンドリック・ラマーとアンソニー “トップ・ドッグ” ティフィスがプロデュースし全米1位と大ヒットしている『Black Panther: The Album』にも「I Am」で参加。そうそうたる面々の中で存在感を放っている。

 デビューアルバムのリリースはまだだが、世界的なスターになる予感は大きい。

Jorja Smith – Let Me Down ft. Stormzy

the fin.『There』

 2016年9月より活動の拠点をロンドンに移した神戸出身のスリーピース、the fin.。3月14日にリリースされるアルバム『There』もいい。リリースとしては約3年ぶりの2ndアルバムということになるので「ニューカマー」の括りで紹介するのはどうかとも思ったが、バンドの体勢としてもモードとしても「デビュー作」と言えるような内容になっている。

 アトモスフェリックなシンセサウンドと浮遊感ある歌声を主軸にしたサイケデリックポップを鳴らす彼ら。3年前に日本のインディーシーンで「洋楽っぽいサウンド」と言われながら活動していた頃に比べると、ロンドンに拠点を移したことで、鳴らす音に奥行きと安らぎが生まれたように思う。

 アルバムは、先行配信された「Snow (again)」や1曲目「Chains」のように、深いディレイとリバーブの波にずぶずぶと沈み込むような曲が中心。彼らのような方向性は今のUKシーンのメインストリームでは決してないが、そのぶん、地に足の着いたスタンスのようなものも感じる。

Snow (again)

      

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