Perfumeの紅白演出は何が画期的だった? 最新テクノロジー×音楽の可能性

 演出振付家・MIKIKOがステージングを手がけたミュージカル風のグランドオープニング映像、連続テレビ小説『ひよっこ』紅白特別編に登場した桑田佳祐、9月16日に引退する安室奈美恵の特別パフォーマンス……振り返ると、今年の『第68回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)も様々な見どころがあった。中でも最新鋭のテクノロジーを駆使して多くの視聴者を驚かせたのは、毎年新たな挑戦を続けるPerfumeのパフォーマンスだ。

Perfume『TOKYO GIRL』(通常盤)

 今回番組でPerfumeが披露したのは、「TOKYO GIRL」。スタジオを飛び出し、東京の一つの象徴とも言える渋谷の街が舞台となった。3人はビルの屋上にあるヘリポートに立ち、MVを再現するようにパフォーマンス。渋谷中のビルからサーチライトのような光が伸びていく様子をあらゆる角度、距離から撮影しているように、視点が次々と切り替わる。放送中に渋谷にいたという視聴者の様子から、実際に渋谷のビルから光が伸びていたわけではなく事前に制作した映像を合成しているようだったが、自然すぎるあまり「一体何がすごかったのか?」「どんな技術が使われていたのか?」をパフォーマンス中に理解するのは難しかったのではないだろうか。

 今回演出における技術開発を手掛けたRhizomatiksはTwitter上で、「詳しい仕組みについてはまたPerfume x Technologyの様な番組等で分かりやすくご紹介出来るチャンスがあればと思います」とコメントしており、詳細は明らかになっていない。しかし、映像を見る限り10月に放送された『内村五輪宣言!~TOKYO2020開幕1000日前スペシャル~』で披露した「TOKYO GIRL」のパフォーマンスをさらに進化させたものだったように思う。12月21日放送の『Perfume × TECHNOLOGY 2017』での解説を踏まえると、『第67回NHK紅白歌合戦』でも使われたダイナミックVR(カメラに連動して背景が変わり、CG合成なしで仮想空間にいるように見せる技術)と『第66回NHK紅白歌合戦』(番組放送局はいずれもNHK総合)のシームレスMR(現実空間と仮想空間を継ぎ目なく行き来する技術)を組み合わせていたようだ。

 ビル群から出るサーチライトや、ビルの窓をスペクトラムアナライザのように見せるといった背景を合成した非現実の渋谷の街と、現実の渋谷を自在に飛び回るドローンを駆使したカメラワーク。そして合成された背景のライトとタイミングにズレのない、ほとんど“完璧”なPerfumeのダンス(おそらく今回も『内村五輪宣言!』同様バミリがなかったのではないか)が、現実と非現実の“継ぎ目”を曖昧にしている。この双方があったからこそ、「何がすごかったのか?」と思ってしまうほど視聴者をステージに没頭させるパフォーマンスが完成したと言えるだろう。

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