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Ovallがいま、4年ぶりの再始動を果たす意義ーー復活ライブを機に紐解く

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 2017年12月3日、SHIBUYA WWWXでOvallが復活ライブを開催した。音楽の歴史には、優れたミュージシャンがアーティストとして表舞台に立つことと、作り手・サポートとして裏方に回ることを繰り返すことによって進化してきたという一側面がある。約4年ぶりとなるOvallの再始動は、まさにこの循環が新たなタームを迎えたことを意味していると言っていいだろう。

 Shingo Suzuki、mabanua、関口シンゴの3人がこの数年で関わったアーティストの数は非常に多い。それぞれがChara、RHYMESTER、Awesome City Club、あいみょん、Creepy Nuts、Negicco、LUCKY TAPES、iri、向井太一、米津玄師、ゲスの極み乙女、SKY-HIと数え始めればキリがないほどのアーティストのプロデュース、フィーチャリング、リミックスなどを手がけ、さらにはプレイヤーとしてメンバー3人が揃ってサポートした藤原さくら、尾崎裕哉に加え、mabanuaはくるりやGotchのバンドにも参加しているのだから、よく腕の数が足りたものだ。

 彼らがこれだけ時代に求められた背景には、ディアンジェロの復活に象徴されるネオソウルの再評価と、それとも関連した新世代ジャズ/ヒップホップのアーティストの台頭があり、それに伴う国内でのブラックミュージック熱の高まりがある。もちろん、彼らがいなかったとしても、2010年代におけるシティポップやラップのブームは起こっていたかもしれないし、Suchmosはブレイクしていたかもしれない。しかし、Ovallの3人がいなければ、その広がり方や受け入れられ方は、きっと今とは違うものになっていたに違いない。

 12月13日にデラックスエディションとして発表される『In TRANSIT』(2012年にファンサイト限定リリース)のジャケットが後方のスクリーンに映し出され、続いて過去の他のジャケットが次々に映し出されることで、これまでの歩みに思いをはせつつ、文字通りトランジットを出て、新たな旅が始まることを想起させる粋な演出に続き、キーボードのNut’sこと村岡夏彦と共にメンバーが登場。1曲目はデビューアルバム『DON’T CARE WHO KNOWS THAT』のオープニングナンバーでもある「Take U  to Somewhere」だ。J・ディラ直系の揺れるビートが「これぞ!」という感じで、オーディエンスは熱狂的なリアクションでバンドの帰還を祝福する。

 Ovallというバンドの最大の特徴はやはり「グルーヴ」。中心人物であるShingo Suzukiのベースは非常に低音が効いていて、ファンキーでありつつ自由なプレイをするのに対し、mabanuaのドラムがレイドバックしたり、プッシュしたり、ジャストに合わせたりすることでグルーヴを生み出していく。さらに、関口シンゴのギターがこちらもリズミカルなプレイを軸に絡んで(もちろん、要所で挿入されるソロも最高)、Nut’sの鍵盤が色鮮やかな彩りを加える。「有機的」という言葉が本当にしっくりくるバンドである。

 途中のMCでShingo Suzukiが「昔は結構メンバーの変遷もあった」と語っていたように、彼らのスタートは2000年代初頭のセッションカルチャーにある。そこではジャズとヒップホップの、生演奏と打ち込みのグルーヴの異種交配が夜な夜な行われていた(という。残念ながら、僕はその場に居合わせることはできなかった)。それが10年以上のときを経て、日本のロックシーンにおけるグルーヴの乏しい「ダンスロック」に対するカウンターになったからこそ、Ovallが再び求められたのだと言うこともできるだろう。

 その後も『DON’T CARE WHO KNOWS THAT』からの曲が続いて、ミニアルバム『Heart Fever』、2ndアルバム『DAWN』と、年代を追うように楽曲をプレイしていくと、中盤でハイライトを迎えたのが「Green Glass」。4つ打ちを軸としたmabanuaのソロから始まる、Ovallの楽曲の中でも特にダンサブルな一曲であり、嫌が応にも体が動く。Ovallとしてのライブはひさびさだが、前述の藤原さくらや尾崎裕哉のライブでは3人が顔を揃えていたため、ブランクは全く感じられない。今年10周年を迎えた所属レーベル<origami PRODUCTIONS>への感謝を伝えると、ラストはアフロテイストの「La Flamme」で圧巻の盛り上がりを見せ、本編が締め括られた。

 アンコールでは『In TRANSIT』から、「Mr.Smith」と、ボビー・コールドウェルのカバー「Open Your Eyes」を披露。『In TRANSIT』は今聴き返すと、同時期にリリースされたceroの『My Lost City』と共通点が多かったり、コモンの「The Light」のサンプリングネタとしても知られる「Open Your Eyes」は、WONKのレパートリーでもあったりと、やはり近年のシーンとのリンクが感じられるのが面白い。

 そして、この日最後に演奏されたのは、『In TRANSIT』のデラックスエディションに収録されている唯一の新曲「Winter Lights」。レーベルメイトのMichael Kanekoが作詞を手掛けたこの曲は、Ovallらしいグルーヴが顕在なのはもちろんながら、過去曲よりもボーカルが前に出ていて、広くポップスの現場で活躍してきた、この4年の3人の歩みが感じられる一曲となっている。


 そもそも、ヒップホップ的なビート中心の1stアルバムに対し、2ndアルバムではさかいゆうや青葉市子をゲストに迎えるなど、よりジャンルレスなポップ寄りのアプローチを見せていただけに、世界的にポップであることと先鋭的であることがイコールになっている2010年代後半において、Ovallが今後どんなアプローチを見せるのかは非常に楽しみだ。「一月にレコーディングをします」という宣言も飛び出したこの日のライブを経て、Ovallは2018年の音楽シーンにどんな光を灯してくれるのだろうか。

(写真=Yusuke Kitamura)

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

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