ゆるめるモ!は結成5年を経てどこへ向かう? プロデューサー田家大知に改めて訊く

田家大知が語るゆるめるモ!の今

「3年分ぐらいは『やるぞ』ということがちゃんとある」

ーー11曲目の「ごろごろ物思い」はミドリカワ書房の緑川伸一さん作詞作曲。この楽曲で描かれる倦怠感と孤独は緑川さんらしいですね。

田家:緑川さんなりにゆるめるモ!のイメージがあるみたいで、もっと壮大な世界観でお願いしたこともあったんですけど、「こんな感じのほうがしっくりくるんですよね」って。

ーーあの、資料にあるCHAGE and ASKAの影響って何ですか……?

田家:深夜の妄想の中で、部屋でひとりで踊れるような曲にしたいなと思ったんです。「どんなゆっくりな曲でも16ビートで歌ってるのは誰かな?」と考えたら、CHAGE and ASKAなんですよ。(CHAGE and ASKAの真似をして小刻みに身体を動かしながら)<余計な物など無いよね〜♪>って、体で歌ってるじゃないですか? 「SAY YES」と「LOVE SONG」の映像をメンバーに見せたら全部伝わるだろうと思って見せたら、完璧に伝わりましたね。

ーー田家さんの動きだけでも全部伝わってきますね(笑)。

田家:メンバーもレコーディングのときにCHAGE and ASKAみたいに動いてました(笑)。テロテロしたギターは、Tame ImpalaやFoalsの単音のギターが、CHAGE and ASKAのリバーブ感の中で鳴っている面白さが欲しいとハシダさんに言ったら、すぐに理解してくれて。

ーーよく理解してくれましたね(笑)。「CHAGE and ASKA+Foals」ってめちゃくちゃじゃないですか!

田家:発明だと思ってます(笑)。これでメンバーもCHAGEさんやASKAさんを身近に感じてると思うんですよ。こうやっていろんな音楽の良さを取り入れて大きくなればいいなと。

ーーライブではどうなるんですか、これ?

田家:振り付けも特にないので、CHAGE and ASKAっぽく歌うかもしれません。

ーー12曲目の「ナイトハイキング(Remastered)」は『WE ARE A ROCK FESTIVAL』から。これも混乱期を感じさせない名曲ですね。

田家:世界観的にアルバムに合うなと思いましたね、「君に寄り添う」って感じがして。「ユートピアっていうのは君の日常の中にあるものだよ」って伝えたかったんです。「ナイトハイキング」は、深夜に空を見上げると楽園はそこにあるよ、っていう歌でもあるんです。

ゆるめるモ!(You'll Melt More!)『ナイトハイキング』(Official Music Video)

ーー13曲目の「永遠の瞬間」は後藤まりこさん作詞作曲。後藤まりこさんは、今なぜ<私が消える5秒前>と歌う、こんなせつない楽曲を書いたんでしょうね。

田家:3月のTSUTAYA O-EASTのライブを後藤さんが見てくれて、この曲を書いてくれたらしいんですよ。その瞬間にすべてを賭ける、生きるか死ぬかみたいなライブを見て。<私が消える5秒前>というのもたぶん比喩で、その覚悟で瞬間瞬間を生きているんだと解釈しています。

ゆるめるモ!(You'll Melt More!) 「永遠の瞬間」 (Official Music Video)

ーー後藤まりこさんとあのさんでギターを弾いてるんですよね。

田家:あのが狂ったようにギターを弾いて、後藤さんが「MELT-BANANAみたいやねー」って(笑)。ふたりでノイズを弾き散らかしてましたね。

ーー14曲目の「must 正」はチベット音楽のようなサウンドで、しかも東洋と西洋が混在していますね。

田家:宗教音楽を目指したんですよ。今回の裏テーマが「宗教」だったので、その宗教感を出したくて。バグパイプって、すごくトリップ感があるじゃないですか? 壮大で宗教的な音がひたすらループして鳴っていたら、祝祭感が溢れる感じになるかなと思ってやってみました。今回初めてお願いした全日本レコードの山さんもすごくかっこいいトラックを作ってくれて。

ーー15曲目の「天竺」は、「NEW WAVE STAR」同様にアフリカのリズムですね。ヨーロッパとの意図的な混乱も感じます。そもそもなんで「宗教」が裏テーマになったんですか?

田家:最も原始的で、言語を超えたプリミティブで原点みたいな音楽は宗教音楽だと思うんです。より壁を壊したい思ってて、誰彼かまわず入ってこられる空間を作るためには、人間が初めて音楽を作ったときの音楽を目指せば、ハードルが低くなるんじゃないかと思いました。だから衣装も無国籍な感じにしましたね。誰でも動物や野生に還れるように。

ーー田家さんはもう次のアルバムのことを考えていますよね?

田家:そうです(笑)。具体的に「こういう感じだな」っていうのもすでにありますね。

ーーあと何年ぐらいゆるめるモ!をやると思いますか?

田家:10年先は全然わからないけど、3年分ぐらいは「やるぞ」ということがちゃんとあります。その先への熱意もありますし、「早く形にしてあげないと」って感じですね。

ーー田家さんにとっては、ゆるめるモ!はまだまだ可能性に満ちていますか?

田家:可能性に満ちてます。というか、当たり前のように面白いことをしてきてると思っているので、可能性なんておぼろげなものではなくて、確信ですね。不安とか全然なくて、ただ確信に満ちたものをベルトコンベアのように順番にオートマティックに出している感じです。僕にはちゃんと見えているので、責任を持って世に出していこうと思いますね。まずは今回のアルバム『YOUTOPIA』を聴いていただいて、1月6日のZepp Tokyoに来てほしいです。会場に来てくれた全員が物語の主人公になれるように、新しいことにも挑戦しつつ、今できる最高のベスト・オブ・ベストなゆるめるモ!を見せますので。

(取材・文=宗像明将)

■リリース情報
『YOUTOPIA』
発売:11月29日(水)
価格:初回限定版(限定16Pブックレット写真集付き):¥3,000+税
通常盤:¥2,500+税

<収録曲>
1.歩くの遅い犬
作詞:小林愛 作曲:mooks 編曲:mooks・安原兵衛
2.逃げない!!
作詞:小林愛 作曲・編曲:M87
3.ミュージック 3、4分で終わっちまうよね
作詞:小林愛 作曲:田家大知・M87 編曲:M87
4.モイモイ
作詞:小林愛 作曲・編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
5.しんぼりくむ れすぽんす する
作詞:小林愛 作曲・編曲:ハヤシヒロユキ(POLYSICS)
6.Youとピアザ
作詞:小林愛 作曲・編曲:M87
7.サマーボカン(Remastered)
作詞:田家大知・小林愛 作曲:田家大知・ハシダカズマ(箱庭の室内楽) 編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
8.やる
作詞:小林愛 作曲・編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
9.うんめー
作詞・作曲:大森靖子 編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
10.あ!世界は広いすごい
作詞:小林愛 作曲・編曲:オータケハヤト
11.ごろごろ物思い
作詞・作曲:緑川伸一 編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
12.ナイトハイキング(Remastered)
作詞:小林愛 作曲・編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
13.永遠の瞬間
作詞・作曲:後藤まりこ 編曲:後藤まりこ・ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
14.must 正
作詞:小林愛 作曲・編曲:山(全日本レコード)
15.天竺
作詞:小林愛 作曲・編曲:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)

ゆるめるモ!『ディスコサイケデリカツアーファイナル at 赤坂BLITZ』

『ディスコサイケデリカツアーファイナル at 赤坂BLITZ』
発売:2017年11月29日(水)
価格:¥5,000+税

■公演情報
『ゆるめるモ!5周年!3rdフルアルバムツアー』
12月10日(日)栃木・HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
12月16日(土)大阪・味園ユニバース
2018年1月6日(土)東京・Zepp Tokyo

■関連リンク
ゆるめるモ!オフィシャルサイト

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