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乃木坂46 3期生舞台『見殺し姫』が示した、アイドル×演劇の新たな理想形

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 乃木坂46の3期生が主演する舞台『見殺し姫』(東京・AiiA 2.5 Theater Tokyo)は10月15日に千秋楽を迎えた。3期生たちは今年、AiiA 2.5 Theater Tokyoを本拠地のように活用しながら、2月の舞台公演『3人のプリンシパル』、5月の『三期生単独ライブ』と、演者としてのステップを重ねてきた。『見殺し姫』はそれに引き続く、3期生にとって初めての本格舞台公演になる。

 この企画は、演技をグループの大きなテーマに掲げて乃木坂46の1・2期生が開拓してきた道を、正統に追いかけるものでもある。1・2期生もまた、2012~2014年にかけて『16人のプリンシパル』シリーズを経験し、翌年からは『じょしらく』シリーズ、あるいは『すべての犬は天国へ行く』、『嫌われ松子の一生』、『墓場、女子高生』、また映画との連動企画となる『あさひなぐ』といった舞台演劇を上演してきた。3期生は『プリンシパル』から本格的な舞台公演までを、この一年のうちに駆け抜けてきたことになる。

 『見殺し姫』は、乃木坂46の舞台の系譜からいえば、『すべての犬は天国へ行く』『嫌われ松子の一生』『墓場、女子高生』の後継にあたるものだろう。ただし、それらの作品がかつて上演された演目の「乃木坂46版」再演であったのに対して、『見殺し姫』は3期生12人に当て書きされたオリジナル作品である。そして、劇団カムカムミニキーナ主宰・松村武の手がけたこの作品が秀逸なのは、単に登場人物レベルでの当て書きにとどまらず、3期生の12人を取り巻く環境とその行く末を、長期的な視野で想像させるように仕組まれている点だ。

 3期生全員がメインキャストとして出演する『見殺し姫』は平安末期を舞台に、都のはずれの竹林の中、塀に囲まれた屋敷に暮らす12人の姫たちを主人公にした物語である。12人の姫たちがいつしか結束し、母のように慕うおとど(かとうかず子)を守る親衛隊「赤兎」を結成して都に名を轟かせ、そして世の趨勢が移り変わるなかで逆境におかれ、やがて離散していくまでを描いている。

 姫たちはそれぞれ知らぬ者同士として集められ、人里離れた場所に隔離された存在として物語に登場する。劇中、汐寝(久保史緒里)と沙霧(山下美月)のやりとりで示されるように、彼女たちは見捨てられた者たちでもあり、見方を変えれば選ばれた者たちでもある。その設定は、乃木坂46というグループの一員でありながら、なかば別働隊として活動してきた3期生たちとごく自然に重なり合う。もちろん、ここまでの3期生の成果を考えれば、後者の「選ばれた者たち」として、この物語世界に希望を託すことができるだろう。

 ただしまた、12人の姫たちが置かれているのは、理不尽さや矛盾をおおいにはらんだ環境である。まだ自らが何者であるかを知らない彼女たちはおとどを母と慕うが、他方でおとどは強権的に都を掌握する横暴な支配者でもあり、12人の姫たちはそもそも、おとどが服従を強いた勢力から人質としてとりあげられた者たちだった。彼女たちを優しく庇護するおとどは、別の側面からみれば恐れられ疎まれる悪人でもある。その巨大な存在があわせ持っている清濁は分離することなどできず、久遠(与田祐希)が語ってみせるように、「鬼神ゆえに、悪事も情も区別がない」。

 その環境を、毀誉褒貶の激しいアイドルというジャンルないしは人気グループのパブリックイメージになぞらえることは容易だし、姫たちがおとどとの間に結ぶ複雑な関係性を、生身の彼女たちに重ねることもできる。親衛隊「赤兎」として痛快に暗躍するシーンは、12人が際立って結束を見せるハイライトになる。そして、グループとしてのその活躍が必ずしも報われず、「悪事も情も区別がない」者によって掌を返される行く末が待っているだけに、「赤兎」の凛々しさはいっそう儚く切ない。

      

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