くるりの発想力と実行力が“得難い体験”をもたらす 兵庫慎司による『京都音博』全アクトレポ

くるり『京都音博』全アクトレポ

 2017年9月23日、11回目のくるり主催のフェス『京都音楽博覧会』には、いくつかトピックがあったので、まずそれらを箇条書きにします。

①くるりのステージが「京都音博フィルハーモニー管弦楽団」と共に行われたということ。

 昨年の『京都音博』の後、岸田繁が京都市交響楽団からの依頼で「交響曲第一番」を書き下ろし、12月にロームシアター京都で披露された(2017年5月にライブ作品としてリリースもされた)。 これらの経験が、これにつながっているのだと思うが、昨年の『京都音博』が悪天候で途中終了したため参加者に見せることができなかった、くるりとオーケストラによるライブを、今年このような形で実現させた、という捉え方もできる(去年とは違うオーケストラ・違う指揮者だが)。

②『京都音博“生”歌謡ショー』という初の試み。

 バックは固定、シンガーが3曲歌っては次のシンガーにバトンタッチしていくという企画で、どんな順番で誰がなんの曲を歌うのか、事前に『京都音博』の公式サイトにアップされた。

 バンドはギター:佐橋佳幸、キーボード:Dr.kyOn、ドラム:屋敷豪太、ベース:高桑圭というおそろしいメンツ。京都音博フィルも共に演奏する。

 そして、京都音博フィルのアレンジは、岸田繁と徳澤青弦が手がける。と、さらっと書いたが、オーケストラのアレンジを、5人×3曲=15曲分行う、しかも基本的にこの1回きりのステージのために、と考えると、ちょっとこれ、えらいことだと思う。

 そのために必要な時間や労力のことを考えると、軽く気が遠くなります。お客さんにとっても嬉しいことだが、歌うボーカリストたちにとっても大きなことだったようで、Gotchや田島貴男など、これはすごいことだ、楽しみだ、と事前にツイートしておられました。

③ 開催11回目にして初めて、くるりがトリではない。

 ①と②の両方が実現したこともそうした理由のひとつだと思う。くるりの出番はトリのひとつ前、トリは『京都音博“生”歌謡ショー』。で、それが終わってから「音博フィナーレ」として、くるりが出てきてあいさつし、音博フィル+バンドと共に「宿はなし」をやって終了、という構成だった。

④ファンファン復帰。

 ご存知のとおり、2015年4月から産休と育休のためライブ活動を休んでおり、ゆえに2015年・2016年の『京都音博』も出演しなかったファンファンが、2017年7月29日の『FUJI ROCK FESTIVAL』からステージに復帰した。なお、去年の『音博』は観に来たそうです。

 最初にくるりの3人で開会のあいさつ。「さすが楽しみ方を知ってはるお客さんが多い、後ろの方から埋まっていく」と佐藤(『京都音博』は客席エリアの前半分がスタンディングゾーン、後ろ半分がシートゾーンになっていて、シートゾーンに基地を作ってアクトによって前に行く参加者が多いのです)。「今回から新しい企画が始まります」と岸田。ふたりに紹介された総合司会のFM802野村雅夫、「いつもとステージが違いますね」と後方を見る。オーケストラ用に、音かぶりを避けるアクリル板であちこち区切られている。

Dhira Bongs

 岸田に「おかえり」と声をかけられたファンファンが、「インドネシアの24歳、私が大好きなアーティストです」と、最初にステージに立つDhira Bongsを紹介する。ジャワ島・バンドゥン出身のシンガー、ひとりでアコースティックギター弾き語り。リズムやベースの入ったトラックを使ったり、ハーモナイザーで歌声を重ねたりしながら4曲を披露。3曲目ではくるりの「ばらの花」を日本語で歌う。この曲を歌っている映像をネットでファンファンが発見し、SNSで紹介したのがそもそものきっかけだったことを、聴いていて思い出す。

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